体温調節中枢は視床下部の視索前野(POA)に存在し、生体内外の環境変化を末梢からの入力として受けている。それにより、POAからの出力が変化し、その環境変化に応じた体温調節反応が引き起こされる。 POA内には、GABA作動性神経があり、体温調節制御に重要な役割を担っている。そこで本研究は、遺伝子改変技術を用い、マウスに光活性化タンパク質であるチャネルロドプシン2(ChR2)およびハロロドプシン(Halo)をGABA作動性神経特異的に発現させ、そして、その神経活動を光によって制御することにより、無麻酔・無拘束下において、GABA作動性神経による生理的な体温調節反応機構についての解析を行うことを目的とする。ChR2およびHaloはそれぞれ非選択的陽イオンチャネルおよびクロライドポンプを形成し、ChR2は青色光により活性化されて、イオンチャネルを開口、膜電位を脱分極させることで、神経細胞では閾値を超えると活動電位を発生させることが出来る。一方、Haloは黄色光で瞬時に反応し、細胞外から細胞内ヘクロライドイオンを流入させ、膜電位を過分極させることによって、活動電位発生を抑制する。今年度は、本マウスを作成し、抗Gad67抗体を用いた免疫染色によって、光活性化タンパク質がGABA作動性神経特異的に発現していることを確認した。さらに、このマウスから脳スライス標本を作製し、GABA作動性神経にパッチクランプを行った。HaloはGFPとの融合タンパク質として発現しているため、GFPの蛍光を指標としてGABA作動性神経を同定した。電流固定により膜電位を記録しながら、対物レンズから黄色光(580nm)を記録神経細胞に照射すると、瞬時に強い過分極が生じ活動電位発生を完全に抑制することに成功した。このことより、in vitroにおいて光活性化タンパク質が正しく機能していることが確認できた。
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