本研究は「一塩基多型(SNP)を指標とするアレル特異的RNAi技術を用いたハンチントン病原因遺伝子である内在性変異型ハンチンチン遺伝子の選択的かつ効果的発現抑制法の確立と、初代培養線条体神経細胞を用いた内在性正常型ハンチンチン遺伝子の発現抑制に伴うリスク評価」を目的としている。本年度は目的達成のため、治療技術としての変異型ハンチンチン遺伝子に対するSNP識別アレル特異的RNAi技術の確立、それに必須な変異型ハンチンチン遺伝子おけるSRPタイピングを迅速かつ正確に行うことを可能にする診断技術としてのリピート病原因対立遺伝子優先的回収法の開発に取り組んだ。 具体的には、ハンチンチン遺伝子転写配列内に存在するヘテロ接合度の高いSNPを指標として、変異型遺伝子のアレル特異的RNAi誘導が可能なsiRNAの選定を行い、効果的なsiRNAを見出した。さらに、ハンチントン病患者由来株化細胞を用いた検証によって、選定したsiRNAが内在性変異型ハンチンチン遺伝子に対し特異的かつ効果的に発現抑制可能であることを明らかにした。また、変異型ハンチンチン遺伝子の異常伸長したCAG繰返し配列を標的とした、相補的繰返し配列を含有するビオチン化RNAプローブを用いて変異型遺伝子の優先的回収が可能であるプルダウン法を開発した。これにより、今まで困難な技術とされてきた変異型対立遺伝子のハプロタイプ診断を迅速且つ正確に行うことが可能となった。 これらの成果は、ハンチントン病テーラーメイドRNAi治療実現に必要な「診断」および「治療」技術において大きく貢献し得るものであり、「診断」技術として開発したプルダウン法はハンチントン病に代表されるリピート病原因対立遺伝子のハプロタイプ解析や変異型遺伝子の特徴づけに有効な技術として特許出願を行った。
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