統合失調症は、人口の約1%が発症する、精神疾患の中でも最も重篤な疾患の一つであるにもかかわらず、発症の原因や病態生理は未解明である。しかし、この疾患の重要な仮説に連続性モデルがある。すなわち、高血圧における血圧や糖尿病における血糖値のように、何らかの特性が連続的に分布し、それが一定のレベルを超えると統合失調症を顕在発症するのではないか、というモデルである。統合失調症においてこの特性にあたるものが、統合失調症型人格と考えられている。統合失調症型人格は、健常者から統合失調症患者へと連続的に分布していると想定されており、遺伝子研究や神経画像研究によって統合失調症と類似した異常を呈することが示されていることから、連続性モデルが支持されてきた。こういった知見が増加することで、統合失調症の病態解明につながるものと期待されている。そこで本年度は、1)健常者の統合失調症型人格が、統合失調症で示されている冬生まれの多さと関連するかを検討し、2)健常者の統合失調症型人格と認知機能障害との関連を大規模なサンプルを用いて明らかにすることを目的とした。冬生まれの健常者は、それ以外の季節(とくに秋)に生まれた健常者に比べて統合失調症型人格傾向が高いことが見出され、統合失調症圏障害の発症は出生早期の要因に少なくとも一部規定されている可能性が示唆された。さらに、約400名の健常者を対象とした検討により、統合失調症型人格はWAIS-R (Wechsler Adult Intelligence Scale-Revised)で測定した知的機能の軽度の低下と関連することが明らかになった。これは、統合失調症患者で明らかにされている認知機能障害と質的に類似したものである。したがって、本研究により、統合失調症型人格と統合失調症の間には連続性があるという仮説を支持する新たなエビデンスが得られた。
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