前年度の検討で、S.Montevideoの型別に有効であると考えられた9か所のTR領域候補についてPCR増幅産物のシーケンス解析を行った。その結果、複数の株でTandem Unitの繰り返し数に差異が認められる3領域を特定した。これら3領域の分離能を評価するため、供試株より疫学的関連性のない14株を抽出し、さらに、1991年から2003年に分離されたS.Montevideo15株を加え、計29株について薬剤感受性試験、PFGE解析、MLVA解析を行った。12薬剤について行った感受性試験では、29株中1株のみがナリジクス酸に耐性を示した。また、制限酵素XbaIおよびBlnIを用いたPFGEでは、29株は17のパターン(相同性90%)に分けられた。一方、MLVA解析では、29株は11パターンに分類され、その分解能はPFGEにやや及ばなかった。しかしながら、MLVA解析では、数時間程度のアガロースゲル電気泳動によるパターンの識別が可能であった。さらに、この3領域について1反応ですべての領域を増幅するMultiplex PCRを確立し、純培養菌から6時間程度でMLVA型別が可能となった。これに加え、今回の疫学解析では、2007年から2008年の間に大阪府で分離された6株が、疫学的関連性がないにもかかわらず、同一の薬剤感受性パターン、PFGEパターン、MLVAパターンを示すことが明らかとなった。この結果から、特定のS.Montevideoによるdiffuse outbreakがこの時期に発生した可能性が強く示唆され、PFGEあるいはMLVAによる疫学解析の重要性が再認識された。今回の研究では、当初目的としていた3血清型のうちS.Montevideoについての検討を中心として行い、結果として、迅速性および簡便性の高いMLVA法を確立することができた。
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