本研究は、現在、世界規模で罹患者数が増加し、肝がんの主要な基礎疾患となりつつあるNAFLD/NASHの分子病態の解明や、適切な診断法・有効かつ安全な治療薬の開発に資する情報の収集を目指し、申請者らが確立した抗体プロテオミクス技術等の手法により、NAFLD/NASH関連バイオマーカーの探索と同定を試みようとするものである。 上記目的を達するために、本年度は、まず、NASHの前段階であるNAFLDのプロテオームを解析すべく、マウスにコリン欠乏アミノ酸置換食(CDAA食)を摂食させ、NAFLDモデルの作製を試みた。6週齢のBALB/cマウスにそれぞれCDAA食と通常食を1週間摂食させた結果、CDAA食を摂食させたマウスでは、通常食を摂食させたマウスに比べ、毛並みが悪く、体重も増加傾向にあった。また、開腹して観察したところ、腹腔内の至る所に脂肪の沈着が認められた。中でも、肝臓では、通常食を摂食させたマウスに比べて顕著に肥大しており、肝重量も有意に上昇していた。また、色も白く、脂肪肝様の所見が観察された。そこで、脂肪の蓄積を詳細に検討するため、肝組織切片を作製し、オイルレッド染色を試みた。その結果、CDAA食を摂食させたマウスの肝臓組織で脂肪滴が観察され、本マウスがNAFLDに移行していることが判明した。 以上の結果を踏まえ、次年度では、通常食で飼育したマウスの肝臓を対照試料として、脂肪の蓄積が観察されたNAFLDモデルマウスの肝臓試料で発現変動している蛋白質の同定を試みる。また、同定した蛋白質のNAFLD/NASH等における機能や発現分布を解析し、分子病態の解明と創薬につながる基礎情報の集積を目指す予定である。
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