研究課題
本研究では、健常からNAFLD、NASHへと進展する移行メカニズムの解明や医薬品開発につながる有用な基礎情報の集積を目指し、各段階の肝臓のプロテオーム解析を試みている。本観点から研究代表者は昨年度までに、NASHの前段階となるNAFLDの肝蛋白質発現プロファイルを解析すべく、コリン欠乏アミノ酸置換食(CDAA食)でマウスを1週間飼育することによって、肝臓組織に脂肪が蓄積されたNAFLDモデルマウスを作製してきた。そこで本年度は、上記通常食で飼育したマウスの肝臓を対照試料として、脂肪の蓄積が観察されたNAFLDモデルマウスの肝臓試料で発現変動している蛋白質の解析を試みた。通常食で飼育したマウスの肝臓とNAFLDモデルマウスの肝臓をホモジナイズし、TCA/Aceton沈殿法により各群の蛋白質を精製した。蛋白質定量後、各試料50μgずつを蛍光色素であるCy3とCy5でラベルし、混合して2次元ディファレンシャル電気泳動法により、NAFLDモデルマウスで発現変動している蛋白質を探索した。その結果、コントロールマウスに比べ、NAFLDモデルマウスの肝試料で2倍以上発現変動していたスポットを15個、2倍以上発現減少していたスポットを18個みいだすことができた。そこでこれらの蛋白質を質量分析解析したところ、8種類のNAFLD関連候補蛋白質を新規に同定することに成功した。今後は、これら蛋白質の発現を各種NAFLD/NASHモデルマウスの肝臓やヒトNAFLD/NASHの肝臓で評価すると共に、NAFLD/NASHの病態における役割を解析する予定である。本研究が、NAFLD/NASHの分子病態の解明、並びに新規診断/治療法の開発に資する知見になることを期待している。
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