【研究目的】本研究では、所属研究室で開発中の新規めっき膜をターゲットとし、イオンミリング法による断面試料作成を行い、新規めっき膜に適した断面構造TEM観察試料作成法を検討した。 【研究方法】Arイオンミリングには、GATAN製Model 691 PIPSを使用した。Arイオンミリングに供する前に、(1)2枚のめっき膜を接着剤で基板ごと貼り合わせ、(2)Si等の補強剤に挟んで補強、さらに(3)打ち抜き、(4)埋め込み、(5)切断、(6)研磨、(7)ディンプル加工といった複雑な前処理工程が必要である。本研究ではこの一般的な方法に適宜改良を加え、オーダーメイドの作成プロセスで断面試料を作製した。 【研究成果】1.ポリイミド(PI)上に形成された新規無電解めっき膜の断面試料作製では、工程全体を見直した。TEM観察メッシュ(3mmφ)に貼り付け可能な1×3mmに切り出すことで、3mmφへの打ち抜き、埋め込みを省略した。幅1mm以下では割れ、剥れが見られた。研磨は、80μm前後まで行った。ディンプル加工は、りん青銅刃で20μm程度まで薄くし、フェルト刃により更に薄く仕上げた。試料は可能な限り薄くする事が望ましいが、ディンプル加工による過剰な薄膜化で、試料薄膜領域の破壊、剥離等が起きた。イオンミリングは、電圧5~6keV、電流20~25μA、ビーム角度3~5度で行い、穴が開く直前、電圧、ビーム角度を調節して仕上げた。現在までにPI/めっき膜界面付近に、密着性向上に結びつく微細な凹凸のある断面構造写真が得られた。 2.Cu基板上に形成されたナノダイヤモンド(ND)含有Ni-P新規無電解めっき膜の断面試料作製では、めっき膜の貼り合わせ、イオンミリング工程を、前項試料と同様の処理を行ったが、りん青銅刃を用いたディンプル加工が困難であった。これは、含有NDが優れた潤滑性、硬度を示すためと考えられる。そこで全てフェルト刃を用いたディンプル加工を行った。作製した断面試料によるTEM観察で、めっき膜部分に5nm程度の微粒子の分散がみられる断面構造写真が得られた。
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