研究課題/領域番号 |
21F20025
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白井 厚太朗 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70463908)
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研究分担者 |
ZHANG MAOLIANG 東京大学, 大気海洋研究所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | チベット高原 / ヘリウム同位体比 / 安定同位体 / 火山ガス |
研究実績の概要 |
チベット高原はインド亜大陸とユーラシア大陸の衝突が起こる場所にあり,高原の東縁は南西方面に拡大しつつあり,第四紀の火山や地熱活動が認められる.本研究の目的は火山ガス,温泉水や地下水を採取して,それらに含まれるヘリウム,アルゴン,炭素,窒素などの揮発性元素の同位体組成に基づき,チベット高原の南西方向への拡大メカニズムを地球化学的に明らかにすることである.温室効果ガスとして重要な二酸化炭素のこの地域での全放出量を計測して,人為活動によらない炭素のグローバルな深部循環に関する知見を得る. 2021年度は既に採取済みの試料について,ヘリウム同位体比や炭素窒素安定同位体比の分析を進めた.Xianshuihe-Anninghe断層帯(XSH-ANHFZ)に沿った11の温泉水とそれに伴う発泡ガス試料について化学組成と同位体組成を分析した.その結果,温泉水は主に異なる高度から涵養された天水起源であることが判明した.ほとんどの試料はNa+とHCO3-に著しく富み,これは地域的な蒸発岩,炭酸塩,Na-ケイ酸塩の溶解に起因していると考えられた.ガス試料の3He/4He比は大気の組成の0.025から2.73倍であり,3He/4He比は、高密度の断層が分布する地域で高く、そこから離れるにつれて徐々に減少していくことが明らかとなった.地域的な地球化学的・地質学的情報を組み合わせると,CO2源はマントルからの深部起源CO2と海洋炭酸塩の変成作用によるものと,海洋炭酸塩の溶解と生物起源CO2による浅部起源とに分類される.マスバランスモデルの結果は,非火山地帯から放出される深部起源CO2が,地球全体の深部起源炭素脱ガス量のかなりの割合を占めている可能性を示していた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で計画していたフィールドワークなどの一部を実施することができなかったものの,既存のサンプルについてヘリウム同位体比や炭素窒素安定同位体比の分析を進めた.分析データは順調に得られており,得られた結果の解釈も進めている.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度も引き続き,温室効果ガスとして重要な二酸化炭素のこの地域での全放出量を計測し,人為活動によらない炭素のグローバルな深部循環に関する知見を得る.また,ヘリウムや炭素の放出量の地理的分布から地震を起こす活断層との関係を調べる.さらに窒素やアルゴンの同位体組成に基づき,プレート衝突帯における窒素の深部循環について調査する.
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