研究課題/領域番号 |
21F20100
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
福居 俊昭 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (80271542)
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研究分担者 |
HUONG KAI HEE 東京工業大学, 生命理工学院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 生分解性プラスチック / ポリヒドロキシアルカン酸 / 微生物合成 / 代謝工学 |
研究実績の概要 |
微生物が産生するポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は生分解性バイオプラスチックであり、プラスチックごみによる環境汚染問題の解決策の1つと期待されている。ポリ(3-ヒドロキシブタン酸-co-4-ヒドロキシブタン酸)[P(3HB-co-4HB)]は柔軟性に優れたPHAである。これまでに前駆体添加なしにP(3HB-co-4HB)を合成可能な組換え微生物が作製されているが、中央代謝経路から分岐した多段階経路であり、還元力やATPの消費を要する。本研究ではシンプルな4HBユニット生成経路を実装した生産株の確立を目指した。 絶対嫌気性ブタノール発酵菌で機能する4HB-CoAデヒドラターゼ(4HCD)を用いることで中央代謝から分離した4HBユニット生成経路を構成できるが、本酵素は酸素感受性のため、これまで好気性細菌では利用されてこなかった。一方、嫌気性アンモニア酸化アーキアの4HCDは酸素耐性であることが報告されている。そこでコドンをPHA生産菌Ralstonia eutrophaに最適化したアンモニア酸化アーキア由来4HCD遺伝子を広宿主域発現ベクターにクローニングし、グルコース資化能を付与したR. eutropha改変株に導入した。作製した組換え株をグルコース培地で培養したところ、振とう数を通常の1/2とすることで2.7-6.6 mol%の4HBユニットを含むP(3HB-co-4HB)共重合体が乾燥菌体重量あたり50-60wt%の蓄積率で生合成されることを見出し、新規PHA生合成経路が微好気条件で機能することを示した。アラビノース誘導性プロモーターを用いた4HCD誘導発現株ではアラビノース濃度を変化させても4HB組成に大きな差は見られず、4HCDによる4HB-CoA生成ではない反応段階が律速となっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
嫌気性アンモニア酸化アーキアの4HCDを用いることで、PHA生産菌R. eutrophaに新規のP(3HB-co-4HB)生合成経路を確立した。アンモニア酸化アーキア由来4HCDは酸素耐性があり、組換え型酵素による活性測定では通常の好気条件で活性を維持することが報告されているが、R. eutrophaで機能させるには微好気条件とする必要があり、生細胞内で生じる活性酸素種に感受性であることが推測された。一方で、誘導発現系で誘導剤濃度を変化させても生合成されたPHA共重合体中の4HB組成に変化はなかったことから、微好気条件であれば4HCDによる4HB-CoA生成が律速ではないことが示唆され、今後の検討を要する課題を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
R. eutrophaにおけるアセチル-CoA代謝の競合経路などにさらなる改変を加えることで、PHAへの4HBユニット導入を効率化する。一方、4HCDの好気条件での機能発現に向け、活性酸素消去酵素や酸素結合タンパク質の共発現により活性酸素種による4HCDの失活を軽減させることを試みる。作製したP(3HB-co-4HB)生産株について培養条件の最適化を行い、速やかな増殖とP(3HB-co-4HB)生産との両立、および、物性的に望ましい4HB組成の制御を可能とする最適な条件を確立する。
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