研究課題/領域番号 |
21F20340
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北川 進 京都大学, 高等研究院, 特別教授 (20140303)
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研究分担者 |
XUE ZIQIAN 京都大学, 高等研究院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 多孔性配位高分子 / 結晶工学 / ナノ空間化学 / 錯体化学 / 半導体 |
研究実績の概要 |
Xue氏と行う本共同研究では、氏がこれまで探求してきた欠陥エンジニアリング・電子状態エンジニアリングの手法を利用して、高選択的かつ高効率的な新しいガス吸着・分離・変換材料を創出することを目指す。これまでに、数多くの多孔性配位高分子(PCP)が報告されてきたものの、ガス分離・変換性能に関して精密に設計制御することは未だに難しい。本課題では、PCPの構造に局所的なダイナミクスを有効に取り入れ利用することで、新しい機能創出を目指す。具体的なターゲットの一つとして、PCPの局所ダイナミクス制御により、二酸化炭素の分離能・細孔内拡散を最適にコントロールすることで、高選択的かつ高効率的な新しい二酸化炭素吸着・分離・変換材料を創出することを目指している。 2021年度の研究では、π共役系配位子を骨格に導入することで、金属種の異なる6種類の導体的な挙動を示すPCP化合物群を開発することに成功した(NDI-PCP群)。電子線回折や放射光を用いたX線回折測定やX線吸収分光法を用いて、調製した材料の詳細な構造を明らかにすることにも成功した。NDI-PCP群はお互いに似たよような細孔構造を持っているが、骨格内のπスタッキングの距離や様式が異なり、それにより異なる電子特性を有していることがわかった。また二酸化炭素に対して大きな親和性を持っており、常温においても二酸化炭素吸着特性を示した。こうした一連のNDI-PCP群の開発は、エネルギー関連のガス捕捉・変換特性を系統的に検討する機会を与えてくれるものである。実際に、得られたNDI-PCPを用いてchemiresistor特性を評価したところ、揮発性有機化合物(VOC)に対して高い感度と選択性を示し、ガスセンシングへの応用の可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の研究では、共役系PCPのπスタッキングを調整することにより、電気伝導度を調整できる一連の新規半導体多孔性配位高分子(PCP)を開発することに成功した。局所的に柔軟なナフタレンジイミド(NDI)ベースの配位子を用いて、PCPの分子足場において長距離秩序化されたπスタッキングでNDI部位を柔軟に編成・配列させ、調製したPCPに半導電性を与える空間内電荷輸送を実現させている。PCPのNDI部位のπスタッキングを制御することで、金属配位構造を変化させ、貫通空間電荷移動を実現し、作製した材料の導電性と電子構造を変化させることができる。これらの構造は、電子線回折や放射光を用いたX線回折測定やX線吸収分光法を用いて、詳細な構造を明らかにすることにも成功している。NDI-PCPの半導体性と調整可能な電子構造から、先端電子デバイスへの応用も可能である。 こうした一連のNDI-PCP群の開発は、エネルギー関連のガス捕捉・変換特性を系統的に検討する機会を与えてくれるものである。得られた半導体PCPを用いた動的センサーデバイスは、揮発性有機化合物(VOC)に対して高い感度と選択性を示し、ガスセンシングへの応用の可能性を示した。また二酸化炭素に対して大きな親和性を持っており、常温においても二酸化炭素吸着特性を示した。 これらの進捗状況から、本年度の新規PCP材料の探索と性能評価に関しては、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、開発したNDI-PCP化合物群のさらなる構造制御及び触媒特性の評価に注力する。特に、二酸化炭素の電気分解装置を用いた特性評価を行う。我々の開発したNDI-PCP群は構造が明確で熱安定性も非常に高く、触媒作用のメカニズムや構造-性能関係を調べるためのモデル触媒として理想的な系である。二酸化炭素の選択的変換の精密制御を促進するとともに、構造-機能相関の基礎的理解を深めることを目的とする。in-situ IR、in-situ X線吸収分光、in-situ X線回折などのin-situ触媒特性評価技術により、触媒の反応機構や触媒性能と触媒構造の関連性を系統的に明らかにする。また、配位子の置換によるPCPの構造制御により、さらに効率的な触媒性能を有するNDI-PCP系の開発も同時に進める。 これらの結果は、複数の論文にまとめて発表する予定である。
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