環境に優しい高分子材料として,使用している時は分解の恐れがなく所望の特性を発現し,使用後にある刺激で分解できる高分子の開発が求められている。本研究ではモノマー単位の並び方(配列)を精密に制御し,ある刺激で分解できる結合を周期的に導入した高分子を設計・合成し,このようなスイッチング分解材料の開発を目指している。 2022年度は分解材料の開発で問題になる安定性の両立に向けて,自己修復性材料の開発を検討した。高分子材料に自己修復性を付与するためには非共有結合で鎖同士の相互作用を動的に強める必要があり,これまでの自己修復性を示す高分子材料には特殊な官能基を導入して非共有結合をデザインする必要があった。最近メタクリル酸メチル(MMA)とアクリル酸ブチル(BA)という汎用モノマーの共重合体が自己修復性を示し,さらに両ユニットの交互配列が自己修復性に重要であると推察している論文が報告されたため,我々は両モノマーの交互配列制御を目指した。重合後にメタノールによるエステル交換反応でMMAに変換できながら,かさ高さのために単独重合性を示さないモノマーを開発し,このモノマーとBAのラジカル共重合が交互共重合で進行することを明らかにした。重合後にメタノールによってMMAとBAの交互共重合を精密に合成し,対応する1:1統計的共重合体に比べて高い自己修復性を示すことを明らかにした。この成果をまとめた論文はAngewandte Chemie誌に受理され,Hot Paperに選出されるほど注目された。
|