研究実績の概要 |
酸素還元反応の向上には、ガス/イオン伝導体/電子伝導体が接する三相界面の増加や、イオン-電子混合伝導体を用いた反応場の拡大が有効である。BaCe0.5Pr0.3Y0.2O3-δ(BCPY)はプロトン・酸化物イオン・電子の混合伝導体であることが知られているが、BCPYの低い酸素還元反応(ORR)活性が問題となっている。そこで、BCPYへ高活性触媒を含浸することで、そのORR活性の向上を試みた。 これまでに、La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3表面上にPrNi0.5Mn0.5O3とPrOxナノ粒子の薄層を形成することでORR活性と安定性が大幅に向上することが報告されている。さらに、PrOxナノ粒子は、高濃度の酸素空孔を介してORR速度を劇的に向上させる可能性があることが示唆されている。また、酸化物イオン伝導体を電解質とした固体酸化物形燃料電池の高活性な空気極触媒であるPrCoO3において、Coの一部をNiに置換するとプロトン伝導の移動障壁が減少し、プロトン伝導性が向上することが報告されている。そこで今年度は、Pr(Ni,Mn)O3およびPr(Ni,Co)O3を含浸法によりコーティングしたBCPY複合空気極材料を開発し、そのORR活性や物性の評価を実施した。その結果、適量のPr(Ni,Co)O3を含浸すると性能が向上するとともに、CO2耐性の向上も確認された。修飾電極の高いORR活性は、主にBCPY担体とPNCナノ粒子の相乗効果に起因し、PNCナノ粒子は表面の酸素交換と水蒸気の吸脱着を促進すると考えられた。また、PNC修飾BCPYカソードを用いた単セルでは、700℃において0.79 W cm-2の高いピーク出力密度を示し、600℃で200時間の安定動作が可能であった。
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