研究課題
本研究は、一次元電子系の量子ホールエッジに沿った熱輸送の史上初の可視化を目的として、幅広く注目されている「中性モード」の伝搬の減衰長を測定することと、QHエッジ中の熱伝搬の速度を測定することである。中性モードの物理的起源についての理論を特定し、理論予測されている熱伝搬が電荷モードより遅いことを検証する。これにより、朝永-ラッティンジャー液体で起こる「熱・電荷分離」という特異な現象を明らかにする。昨年度は、量子ホールエッジの局所的温度上昇を測定する温度計の信号雑音比を上げる対策を行った。主な雑音を取り除いた結果、試料のウエハー基板中の励起子に由来する雑音が残った。この信号の特徴を測定することでバックグラウンド信号として扱うことができた。この知見を元に、試料に印可したゲート電圧の関数として、温度計の熱電圧応答にピークがあることを観測した。このピークは、量子ホール状態にある試料の電気伝導率のプラトー間のステップと一致し、ゼーベック係数を定めるモット関係に従うことが明らかになった。この電圧信号を空間的に操作することで空間マッピングを行うことができた。この熱電圧の空間マッピングでは、ゲートに最も近いエッジで最も強く、距離とともに減衰する応答が見られ、ゲートの上流側でのみエッジを沿い、下流方向への熱のカイラリティと一致した。さらに磁場方向を反転させると、応答が起こるゲートの側が反転することも、カイラリティと一致した。熱電圧応答の減衰を指数関数でフィッティングしたところ、占有率nu=2に固定しながら磁場を増加させると熱減衰長が増大することが分かった。これはエッジの温度応答の実空間マッピングから熱減衰長を初めて測定したことを示すものである。観測した熱減衰長の磁場もしくは電子密度依存性は、エッジからのエネルギー散逸の仕組みに関するさらなる研究の指針になると思われる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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応用物理
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