研究実績の概要 |
昨年度見いだしたBa-Si系酸窒素水素化物材料のより詳細な構造解析を進めた。Ba-Si系酸窒素水素化物材料をAr等の不活性ガス中で加熱すると、格子窒素や水素が脱離し、材料中に多量のアニオン欠陥が形成される。骨格中のBaやSiは価数変化しないため、アニオン欠陥サイトに電子が局在し、それに伴うESRシグナルが観察された。加熱温度上昇に伴い、ESRシグナルは強くなり電子濃度が高くなっていることが確認できた。また600℃程度でほぼ全量の格子窒素や水素が脱離するが、結晶構造は崩れず格子体積が小さくなる。この欠陥を導入した試料を用いてアンモニア合成を行うと、欠陥導入前よりも触媒活性が向上し、さらに反応後は欠陥サイトに窒素および水素が再生され、こう体積もほぼ元の大きさに戻ることがわかった。本材料は、Ruを担持すると著しく高いアンモニア合成活性を示すが、Fe, Co, Ni等の非貴金属を担持しても酸化物担持触媒よりも遙かに高い性能を示した。本材料にN2を吸着させ、FT-IR測定を行ったところ、Ba-Si系酸窒素水素化物材料の欠陥サイトにN2が補足され、欠陥中に生じた電子により窒素が直接活性化される様子が観察された。 また、本材料合成で得た知見を生かし、優れた促進効果を持つBa-Si窒化物材料の合成にも成功した。本材料も、Ru等を担持すると非常に高いアンモニア合成活性を示した。また、アンモニア分解反応に対しても高性能であることが示された。
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