研究課題/領域番号 |
21F21039
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
依光 英樹 京都大学, 理学研究科, 教授 (00372566)
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研究分担者 |
PERRY GREGORY 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | スルホンアミド / スルホニルピロール / フォトレドックス触媒 |
研究実績の概要 |
スルホンアミドを活性化する手法として、酸性条件下、2,5-ジメチルテトラヒドロフランとの縮合によりスルホニルピロールを合成する手法を開発した。得られたスルホニルピロール中間体に対して、還元剤として第三級アミンとフォトレドックス触媒としてイリジウム錯体存在下、青色LEDを含水アセトニトリル中で照射すると、炭素―窒素結合の還元的な切断がおこり、対応するスルフェナートアニオン中間体が発生した。このアニオン中間体は、ハロゲン化アルキルとの求核置換反応、求電子的フッ素化、芳香族求核置換、ニッケル触媒によるクロスカップリングなど、さまざまな反応で有用なスルホン類に変換できた。また、スルホニルピロールは電解還元を用いても還元的にスルフェナートアニオン中間体を発生させられる。さらに、スルホニルピロールはグリニャール反応剤や第二級アミンのリチウムアミド、水酸化物イオンといった求核剤と置換反応を起こすことも明らかになった。スルホンアミドの活性化と得られたスルホニルピロールの変換は温和な条件下で進行し、医薬品の薬効成分として実際に利用されているスルホンアミドの変換にも活用できた。例えば、抗炎症剤としてよく利用されるセレコキシブのスルホンアミド部位の各種変換を達成した。 こうした高原子価硫黄を利用する研究の一環として、高原子価硫黄を鍵とする有機合成反応、特にビアリール骨格の構築について取りまとめ、総説を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、スルホンアミドとフタル酸無水物から対応するフタルイミドに変換する手法を開発する予定であったが、より効率的な活性化法として、2,5-ジメチルテトラヒドロフランとの縮合を発見した。得られるスルホニルピロールはフタルイミドよりも取り扱いが容易でありながらも反応性は高いことから、当初の予定よりも優れた手法を開発できたと考えている。 また、当初の計画では、モデル反応としてスルホニルラジカルを経由するピロールの2位C-Hスルホニル化を想定していたが、実際の研究では、ラジカルではなくアニオン種としての反応性を確立した。ラジカルとしての捕捉が想定以上に困難であったためである。しかしながらその代案として、アニオン種の1電子酸化により求電子的フッ素化をはじめとする求電子的な反応が可能になっており、間接的なラジカル種の活用を可能にした。また、アニオン種としての活用は難なく達成しており、変換反応のレパートリーは想定よりも広がったとも言える。 さらに、Late-stageでのスルホンアミドの変換もきっかけをつかんでおり、順調に新年度の研究を開始できている。 総合的に見て、想定よりも順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに確立した手法をもとに、以下のプロジェクトに取り組む。 フォトレドックス触媒を用いるトリフルオロメチル化反応、アルキル化反応、遷移金属錯体触媒との協働触媒系によるアリール化とカルボメタル化に展開し、多様なスルホン類の合成法を開発する。合わせて、それらの脱二酸化硫黄を伴う類縁反応の開発も検討し、スルホンアミドをカルボアニオン等価体とする反応を視野に入れる。トリフルオロメチル化剤ならびにアルキル化剤といった求電子剤、協働作用をもたらす遷移金属錯体触媒の選定が重要であり、重点的に精査する。特に触媒の配位子が反応の成否にもたらす影響は大きく、かさ高いホスフィン配位子やN-ヘテロサイクリックカルベン配位子、二座配位子などを徹底的に調べる。さらに合成終盤での化学選択的官能基化への展開も検討する。これをもとにスルホンアミド基を足掛かりとした二つの生物活性分子のコンジュゲートのテイラーメード合成を図る。とくに、セレコキシブをはじめとするサルファ剤からの分子変換を目指す。
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