コマツナを温度を5、10、20℃に設定した恒温室に保管した。試料を保管前および保管開始後1、2、3、4、7日後にサンプリングし、可視-近赤外分光分析に供試した。また、各試料の積算二酸化炭素排出量をガスクロマトグラフィーで測定して鮮度指標とした。試料は測定後直ちに液体窒素で凍結し、凍結乾燥してNMR分析に供試した。凍結乾燥した試料をM、Bの部位に分け、微粉砕した後重水リン酸カリウム緩衝液に溶解した。試料の1H NMRスペクトルはAVANCE 500 MHz分光器(BrukerBioSpin)を用いて取得し、ライブラリを用いて代謝物のアノテーションを行った。 数値解析ソフトMATLAB 2018b(マスワークスジャパン)を用いて可視-近赤外スペクトルから積算温度を推定する回帰モデルを構築した。また、可視-近赤外スペクトルで回帰に有効と判定された波長帯の吸光度と1H NMRスペクトルの相関解析を行い、鮮度指標の推定に寄与する代謝物を探索した。 その結果、可視-近赤外スペクトルを用いて鮮度指標を推定可能なことが分かった。また、NMRスペクトルの解析により、積算二酸化炭素排出量が増えるにつれ、Tyrosine、Isoleucine、Alanineといったアミノ酸類が増加することが分かった。さらに、これらの成分に対応するNMRスペクトルの化学シフト領域と、鮮度指標推定に有効な可視-近赤外スペクトルの波長領域に相関関係があったことから、アミノ酸類の増加に応じて可視-近赤外スペクトルが変化し、それによって鮮度指標が推定可能になったと考えられた。
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