研究課題/領域番号 |
21F21115
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
茂呂 和世 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90468489)
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研究分担者 |
LO PEI-CHI 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | 多嚢胞性卵巣症候群 / ILC2 |
研究実績の概要 |
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovarian syndrome)は、若い女性に起こりやすい排卵障害で、卵胞が発育するのに時間がかかり排卵しづらくなる疾患である。排卵障害のなかでも頻度の高い疾患で女性の20~30人に1の割合で発症する。ホルモン異常による排卵障害であるが、近年、ホルモンの恒常性維持や肥満の発症に免疫細胞が関与することが明らかになってきたことから、免疫学的視点からのPCOSの病態解明が期待されている。2型自然リンパ球(ILC2:Group 2 innate lymphoid cells)は抗原依存的なT細胞とは異なり、生体内因子であるサイトカイン、脂質、神経ペプチドなど多様な因子によって活性化する。ILC2は肺や腸管、皮膚など外界と接する臓器に多数存在することが知られており、その役割が解明されてきたが、生殖器にも存在する事が分かってきた。また、ILC2を欠損するマウスでは高脂肪食誘導性肥満が起こらないことや、このメカニズムに臓器特異的ILC2が関与することなども分かってきた。ILC2は組織常在性の細胞であり、存在する組織によってサイトカイン感受性、サイトカイン産生能などが異なる事が報告されている。ILC2はアレルギーや線維症で特に注目されている細胞であるが、近年、ILC2がホルモンによって活性化する事が明らかになってきたことから、ILC2が生殖器において何らかの役割を担っている可能性は高いと考え、本研究では自然リンパ球に注目しPCOSの発症機構を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PCOSの発症には黄体化ホルモン、卵胞刺激ホルモン、インスリン、アンドロゲンなど様々なホルモンが関与し、肥満との強い相関関係も知られている。PCOS患者は無月経となることで不妊症の原因ことが分かっていることから、少子化問題の観点からも注目されている。2型自然リンパ球(ILC2)は免疫細胞の中でもホルモン感受性が高く、インスリン抵抗性や肥満に関与することがわかってきた。ILC2に発現するアンドロゲン受容体は抑制系のシグナルを入れ、一方で、エストロゲン刺激はILC2を活性化させることもわかってきた。気管支喘息の研究ではこの2つのホルモンによるILC2の活性化状態が性差を作り出し、40代以降の女性で肥満傾向のある患者に特有の喘息を誘導する事が示唆されている。
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今後の研究の推進方策 |
PCOSにおけるILC2の役割を明らかにする事でPCOSの発症機構を理解し、ILC2が将来治療標的となる可能性を探る。ILC2欠損マウス、ILC2の活性化に重要なIL-33の欠損マウスなどを用いてPCOSモデルマウスを作製し、ホルモン変動、組織学的な卵巣の形態変化、妊娠率などを評価する。また、ILC2の欠損マウスは肥満にならないことが知られていることから、肥満とILC2とPCOSの関係を明らかにするためにPCOSモデルマウスに高脂肪食負荷を行う事でその関与を精査する。
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