多嚢胞卵巣症候群(PCOS)は、ホルモンバランスの乱れによる女性に多い女性内分泌疾患であり、不妊症、流産、早産などの原因となる。卵巣は女性の主な性ホルモン産生器官であるが、一部の免疫細胞も排卵に関与している。ホルモンの恒常性は、排卵過程における卵胞内の免疫細胞の浸潤とサイトカインの産生に影響を与える。ホルモン、特に血漿中のアンドロゲンやインスリンの過剰によって、月経周期が不規則になり排卵がうまくいかず、PCOSを引き起こす可能性が高くなる。PCOSを持つ女性は、II型糖尿病、子宮内膜がん、心血管疾患を患うリスクが高いため、PCOSにおける免疫細胞に着目して研究を行った。 Interleukin-33 (IL-33) は多面的な作用を持つIL-1ファミリーサイトカインであり、排卵時には月経ホルモン(LH、FSH、エストロゲン)と常に同様の変動パターンを示す。IL-33シグナル伝達の異常は、子癇前症や再発性妊娠喪失などの妊娠関連疾患や、体外受精のための卵巣刺激制御を受ける女性の卵巣機能にも関与していると言われている。IL-33の受容体は、ヘテロ二量体のIL-1受容体アクセサリータンパク質(IL-1RacP)とIL-33受容体(mST2)である。mST2の膜貫通領域と細胞内領域を欠く可溶型ST2(sST2)は、IL-33のシグナル伝達を調節するデコイ受容体として考えられている。そこで、sST2の発現細胞の同定を試みたところ、マスト細胞、ILC2、好酸球が産生することが明らかになった。中でも、ILC2sは最も多くsST2を産生する細胞であった。このことから、ILC2がsST2産生によってPCOSの結果に影響を与える可能性があると考えた。
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