本研究では,蛍光油を使って物体表面の流体摩擦応力分布を計測する画像診断技術の改良と,これを適用した自動車の空力抵抗低減に向けた自動デフレクターの効果を評価することを目的とする. これまで技術開発を進めてきた本画像解析技術に対して,今回,新しい計算スキームを適用した解析アルゴリズムを提案し,プログラム実装した.この解析手法をアハメドモデルと呼ばれる準標準自動車模型に適用するため,特に横風時における空力現象に着目した風洞実験を実施した.得られた摩擦応力ベクトル線の解析画像結果から,車体後部のスラント面及び背面におけるミクロ・マクロな渦構造の抽出に成功した.既存技術では解析の際のパラメータ調整による後処理に時間がかかることが問題であったが,本提案手法によってこれらのパラメータ依存を克服しており,後処理に要する時間を大幅に軽減することができた.さらに姿勢変化やレイノルズ数変化に伴う渦構造の変化と空力特性の関係性を見出すことができた. 上記の達成度のもと,空力抵抗低減を目的として自動デフレクターの効果を検証するため,本手法の適用による車体後部の渦構造の変化及び空力特性への影響を評価した.自動デフレクターの有無によって後流構造に大きく影響する車体後部のスラント面における渦構造は大きく変化し,これにより抗力係数も減少する効果が得られた.またデフレクター角度による影響も評価し,デフレクター角と空力抵抗の関係及びそのときの流れ場の変化も整理することができた. これらの成果は国内・国際学会にてそれぞれ1件ずつの発表予定であることに加えて,現在,学術論文4本に纏める準備を進めており,同時期にそれぞれの内容を投稿する予定である.
|