研究課題
本研究では時間分解テラヘルツSTM装置(以下THz-STM)を用いて遷移金属ダイカルコゲナイド原子層(TMDC)におけるキャリアダイナミクスの計測を進めてきた。THz-STMはTHzパルス光を走査トンネル顕微鏡(STM)の探針-試料間に照射することで誘起されるパルス的なトンネル電流を用いて試料の瞬間的な状態をとらえることができる。本研究では可視~赤外域の光パルスにより試料を励起し、その励起状態をTHz電流により計測する。THzパルスの時間幅は1ピコ秒程度であるためピコ秒の時間分解能かつ、STMの原子分解能を併せ持つ計測が可能となる。本研究では、マイカ上Au表面にMoS2単層、WSe2単層を転写した際に自発形成される20nm ~ 100 nmサイズのサスペンド構造上でTHz-STM計測を行った。サスペンド構造の周辺では、TMDC単層はAu表面と強く結合しているため光励起されたキャリアや励起子は直ちにクエンチを起こし光励起に伴う変化は観測されなかったが、サスペンド構造上ではAu表面とデカップリングしており、光生成キャリアに伴うTHz電流の変化が観測され、サスペンド構造上で時間分解計測を行ったところ数psと数100 psの2つの指数関数減衰を示すことがわかった。同様のサスペンド構造上で時間分解発光計測を行ったところTHz-STMの結果と同様の数100 psの緩和時間が得られたことからTHz-STM計測の信号の起源としては励起子との関連が強く示唆された。本成果TMDC単層上の超高速ダイナミクスをTHz-STMを用いて計測できることを示す重要な成果である。TMDCサスペンド構造はサイズに加えて、形状や歪に依存して緩和ダイナミクスが変化する結果も得られており、今後さらに実験を進めていくことでより局所的なキャリアダイナミクスの詳細が明らかになると期待できる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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