研究課題/領域番号 |
21F21727
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
稲熊 宜之 学習院大学, 理学部, 教授 (00240755)
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研究分担者 |
LEMOINE Kevin 学習院大学, 理学部, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2021-07-28 – 2023-03-31
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キーワード | フッ化物 / 高圧合成 / 酸フッ化物 / 遷移金属化合物 / 電極活物質 / 電気化学特性 / 結晶構造 |
研究実績の概要 |
陰イオンとしてフッ素を含む遷移金属化合物はフッ素の高い電気陰性度に起因した高電位・高エネルギー密度を実現する二次電池の活物質として期待されている。一方、合成の困難さゆえにそれほど多くの化合物については検討されておらず、その可能性がまだ十分に明らかにされていない。そこで、本研究では高圧合成法を用いて鉄をはじめ遷移金属を含む新規遷移金属フッ化物および酸フッ化物の合成を行い、リチウムおよびナトリウム二次電池の活物質としての応用の可能性を明らかにすることを目的とした。 この中で、ポストペロブスカイト型フッ化物NaFeF3を15 GPaの高圧下で合成し、結晶構造解析および57Feメスバウワー測定を行った。メスバウワー測定により、ポストペロブスカイト相は300 Kおよび77 Kにおいて常磁性を示すことがわかった。また、精密化した結晶構造データを用いた結合原子価解析によりNaイオンのイオン拡散経路を推定し、ポストペロブスカイト構造の方がペロブスカイト型構造に比べて拡散の活性化障壁が小さく、Naイオン電池の活物質の候補としてよりふさわしいことが示唆された。 また、リチウム遷移金属フッ化物の合成についても検討を行った。この中で、LiFe2F6は、常圧では正方晶のトリルチル型構造をもつが、約3GPaの圧力下での合成によりLiMnFeF6と同様な三方晶の相が得られることを突き止めた。結晶構造解析および57Feメスバウワー測定により、構造中でFe2+とFe3+イオンが規則配列していることがわかった。得られた試料を正極活物質としてリチウム電池を作製して充放電特性を調べたところ、電池として機能することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポストペロブスカイト型フッ化物NaFeF3に関する研究成果は、論文として纏め、すでに学術雑誌に発表済みである。また、リチウム遷移金属フッ化物LiFe2F6についても論文として纏め、すでに受理され学術雑誌に掲載予定である。このようにFeを含むフッ化物の研究はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も鉄を含むフッ化物の合成、結晶構造解析、電気化学特性に関する研究を継続しつつ、鉄を含む酸フッ化物や他の遷移金属フッ化物および酸フッ化物に関する研究へ展開していく予定である。
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