研究実績の概要 |
申請者は、合成CpG-ODN(非メチル化CG配列を含む一本鎖オリゴデオキシリボヌクレオチド)の歯髄組織における免疫調節効果を評価した。2週齢ICRマウス上顎第一臼歯を抜去後、CpG-ODN溶液に30分間浸漬後または即時に再植する。CpG-ODNとしてtype A(形質細胞様樹状細胞活性化作用)とtype B(B細胞活性化因子として、TNF-α、IL-6を誘導)を用い、溶媒としてDWまたはHanks溶液を使用し、CpG-ODN無添加群を対照群とした。これまでに下記の結果が明らかになっている。in vivoデータでは、type B CpG-ODN (K3, 0.63 mg/mL - 0.1 mM dissolved in DW) 低濃度溶液に30分浸漬すると、他のタイプおよび濃度の合成CpG-ODNと比較して、マウスにおける再植歯の歯髄再生が改善することを示した。また、type B CpG-ODN溶液は、2週目に高い割合で歯髄内硬組織形成を誘導した。2回目の実験では、Hanks溶液に溶解した低濃度のtype B CpG-ODNが、即時および遅延歯の再植後の歯髄の治癒を改善する傾向があることが確認された。したがって、低濃度のCpG-ODNによる処理は、歯髄において強力な免疫賦活反応を引き起こし、他の在住細胞集団との相互作用を促進する可能性がある。しかしながら、遅延再植に比し、即時再植で結果が明瞭に示せなかったのは、薬液の歯髄への浸透の問題があげられる。さらに、至適CpG-ODN濃度も確定していない。今後はまず、さらに低濃度のCpG-ODN処理と浸漬時間の延長実験を追加して、至適評価モデルの確立を図る予定である。加えて、再植歯髄の炎症・感染に対するCpG-ODNの治療効果を検証するため、in vitro実験も進める必要がある。
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