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2021 年度 実績報告書

長大斜張橋の地震時応答制御に有効なダイナミック・マス制振装置の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21F31067
研究機関東北大学

研究代表者

五十子 幸樹  東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (20521983)

研究分担者 CHEN XU  東北大学, 災害科学国際研究所, 外国人特別研究員
研究期間 (年度) 2021-07-28 – 2023-03-31
キーワード斜張橋 / 制震構造 / 動吸振器 / ダイナミック・マス / 同調粘性マスダンパー / H2ノルム制御
研究実績の概要

2021年度の成果は,下記に記すように理論的研究成果と実験的研究成果から成る.
まず,理論的研究成果であるが,同調粘性マスダンパー制震システムの設計法として,既往研究のH∞制御を発展させ,H2ノルム最小化設計法について検討した.
実験的検討として,エム・エムブリッジ株式会社との共同研究により,斜張橋の特性を模擬した鉄骨試験体に同調粘性マスダンパー縮小試験体を組み合わせた震動台実験を実施した.今回用いた同調粘性マスダンパー試験体の特徴は,減衰要素として渦電流ダンパーを用いたこと,バネ要素として棒状のエラストマーを束ねた捩じりバネを用いた点である.特に,バネ要素において捩じりバネを用いたことで,バネ要素の変形が軸方向ではなく回転方向となったことにより,従来の同調粘性マスダンパーで課題となっていた大きなバネ軸変形を解消している.この実験により,同調粘性マスダンパーの斜張橋への適用の第一歩を踏み出せたものと評価している.
実験では良好なデータを得た一方で,束ねたエラストマー捩じりバネが遠心力のために孕み出すことの影響が少なくないことが分かった.そこで,捩じり剛性に影響を与えない範囲でエラストマー捩じりバネの孕み出し変形を拘束する要素を追加することを検討している.
上記検討に付随して,同調粘性マスダンパーが構造物固有周期より短い周期帯で剛性を増大させることの対策について検討している.この剛性増大は外乱作用時の変形の抑制に作用する場合もあるが,望ましくない絶対応答加速度の増大に結びついてしまうこともある.そこで,新しい負剛性デバイスの検討も始めたところである.この装置は,提案システムのみならず,免震建物などにも応用可能なものである.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

同調粘性マスダンパーを斜張橋に適用することを考えた場合,これまでに実績のある建築構造物とは異なる課題に直面していた.ダンパーストロークが建築物用のそれよりも大きくなることで,装置製作上の困難に直面していた.建築で用いられていた軸方向バネでは実用化が困難であるため,捩じりバネを用いることで,軸方向の変形を回転変形へと変換する工夫を行った.捩じりバネは棒状のエラストマーを束ねることにより実現した.縮小試験体により,所要のバネ変形に対して線形性,安定性を保つことを確認した.同調粘性マスダンパーとしての性能も,実用的な精度で設計値通りとなることを確認した.
一方で,同調粘性マスダンパーは同調周期より高い振動数で剛性を付与する性質がある.この剛性増大は変形の抑制につながる場合もあるが,応答加速度を増大させる懸念もある.そこで,剛性の増大が振動制御性能を低下させてしまう場合の対策技術として,負バネ要素の検討も合わせて始めたところである.現在,実用的な装置の材料,寸法を含めた詳細検討を進めている.
以上のように,研究は概ね順調に進展していると評価している.

今後の研究の推進方策

2021年度は,同調粘性マスダンパー制震システムの長大斜張橋への適用拡大のための検討を進め,実験的検討によりその可能性を提示することができた.実用化を考えた場合,フェールセーフの観点から,同調粘性マスダンパーシステムだけではなく,他の装置と組み合わせたハイブリッドシステムも検討していく必要がある.組み合わせる装置は,新しい提案システムの信頼性を補う意味でこれまでに使用実績のある信頼性の高い装置を検討対象とする.
これに加えて,同調粘性マスダンパーが高振動数域で付与する剛性を打ち消すための負バネ要素の検討を更に推し進める予定である.この提案負バネ要素は,同調粘性マスダンパー制震システムだけではなく,高架橋の免震橋脚などへの応用も考えられ,発展性のある研究である.
また,2022年度においては,これまでに得られた理論的・実験的研究の成果をまとめて国際専門誌に論文を執筆し発表する予定である.

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公開日: 2022-12-28  

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