F/M鋼の耐酸化性に対するSi含有量の影響は、600℃にて2000時間までの酸素飽和液体ビスマス合金(LBE)への曝露材について調査した。同様に照射した12wt.%Si含有鋼(12Si鋼)の耐食性に対するの影響については300℃にて333時間までのLBE暴露により確認した。結果は以下の通り。 (1)Si含有12Si鋼に形成される酸化層は,外層,内層,金属材側の内面酸化域(IOZ)の3層構造であり,そのうちIOZはSi含有F/M鋼のみに形成された。さらに、酸化物層のシリコンは、主に旧オーステナイト粒界とIOZのマルテンサイトラスで濃縮され、Cr2O3が混在した(Cr2O3充填)非晶質SiO2として観察された。 (2)新しい複雑なCr2O3充填アモルファスSiO2構造は、FeとOの拡散速度を効果的に低下させ、内層の緻密性を高め、内層のナノポア生成を抑制し、Oの内部拡散を明らかに減少させることができ、LBEの耐酸化性の向上につながることが確認された。 (3)核融合炉候補材SIMP鋼に1.2wt.%のSiを添加すると、その酸化速度を効果的に低下させることができ、酸化物層形成を放物線近似したときの係数は6.2×10-12 cm2/sに減少し、液体LBEに対する優れた耐食性を示した。 (4)照射材(照射量6.7dpa)では、非照射材では不均一酸化であった腐食特性が均一酸化に移行することを確認した。ただし照射材の腐食は非照射材の3倍程度に加速されることが確認された。 これらの結果に基づいて、酸化膜の形成、成長、および不安定化のダイナミクスがLBE環境で確認され、腐食挙動に対する照射影響が明らかになった。同時に、酸化膜の安定化に及ぼすSiの機能が解明された。この成果は、核融合炉や溶融金属冷却炉等の極限環境で候補となる高機能な鉄-Cr合金開発への指針となる。
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