研究課題/領域番号 |
21H00468
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
小出 泰士 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (30407225)
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研究分担者 |
浅見 昇吾 上智大学, 外国語学部, 教授 (10384158)
秋葉 悦子 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (20262488)
松田 純 静岡大学, 人文社会科学部, 名誉教授 (30125679)
小林 真紀 愛知大学, 法学部, 教授 (60350930)
本田 まり (眞鍋まり) 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (60384161)
香川 知晶 山梨大学, 大学院総合研究部, 医学研究員 (70224342)
横野 恵 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (80339663)
児玉 聡 京都大学, 文学研究科, 教授 (80372366)
奥田 純一郎 上智大学, 法学部, 教授 (90349019)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生命倫理 / 医療倫理 / 自殺幇助 / 安楽死 / 生殖補助医療 / 統合性 / 傷つきやすさ / 人間の尊厳 |
研究実績の概要 |
生命倫理の諸問題、とりわけ、終末期の治療の差し控えや中止、自殺幇助や安楽死、また、同性カップルや独身女性に対する生殖補助医療が、ヨーロッパにおいては、どのような原理・原則に従って規制されたり容認されたりしているかについて、法学的視点から、あるいは、哲学・倫理学的視点から、掘り下げた考察を積み重ねてきた。 アメリカにおける生物医学倫理の4原則「善行、無危害、自律尊重、正義」とは幾分異なり、ヨーロッパにおいては、ヨーロッパ独自の4原則「尊厳、自律、統合性、傷つきやすさ」に基づいて、生命倫理分野の実践が規制あるいは容認されてきた。とはいえ、そうした規制は不変的・固定的なものでは決してなく、やはり時代とともに変遷している。 今年度は特に、「私生活の権利」「統合性」「自己決定権」「人格権」「生命権」「人間の尊厳」「死を選ぶ権利」といったキーワードを中心に、ヨーロッパの動向の分析・研究を進めてきた。ドイツ連邦憲法裁判所が、業務による自殺幇助を罰する刑法の規定に違憲判決を出したことをはじめ、すでに安楽死が行われてきたオランダやベルギーの状況についての分析、あるいは、ヨーロッパ人権裁判所の立場などについて、多角的に検討してきた。 また、フランスでは、生殖補助医療の利用の目的を、1994年の生命倫理法以来、「医学的に診断された不妊症の治療」に限定してきたのだが、家族形態の多様化、性的志向の多様化に伴い、2021年に、女性カップルや独身女性が子どもを持つために、生殖補助技術が使用できるように生命倫理法が改正されたことに関しても、掘り下げた検討がなされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、ヨーロッパでは、いわゆるベネルクス3国のオランダ、ベルギー、ルクセンブルクやスイスだけでなく、スペインやドイツでも自殺幇助や安楽死の非刑罰化あるいは容認の方向に進展しており、さらには、イタリア、ポルトガル、アイルランド、フランスでも、その方向性で様々な法案が準備あるいは検討されている。こうした動向の根底にある価値観、原理を探求することが、本研究の目的であるが、ドイツやオランダの状況を詳細に分析・検討することで、そのための着実な進展が行われている。
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今後の研究の推進方策 |
終末期医療、安楽死、自殺幇助の分野だけでなく、生命倫理の他の分野、例えば、ゲノム編集、着床前診断、出生前診断、生殖補助医療、臓器移植、再生医療などについても、欧米諸国における生命倫理政策を根底で支える基本理念や価値観を、各国語で書かれた報告書や論文、著作物など様々な資料の分析を通して解明し、その成果を蓄積して、法学的、哲学・倫理学的な比較研究へとつなげていく。
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