研究課題/領域番号 |
21H00491
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
萩岡 松韻 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (30376925)
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研究分担者 |
久保田 敏子 京都市立芸術大学, 日本伝統音楽研究センター, 名誉教授 (10090200)
野川 美穂子 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (50218294)
長谷川 慎 静岡大学, 教育学部, 教授 (00466971)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 山田流箏曲 / 楽譜化 / 浄瑠璃物 / アーカイブ / 古典芸能 |
研究実績の概要 |
本研究は、山田流箏曲の中でも特に「浄瑠璃物」について、近世邦楽、とりわけ、一中節、河東節等の三味線音楽との関係を文献研究から明らかにするとともに、過去の楽曲の録音、楽譜資料等の演奏表現に関する調査から、その特徴、演奏法、演奏表現(歌唱と器楽)を整理して、近年ほとんど演奏の機会がなくなっているこれらの曲を次代へとつなぐために楽曲の保護保存・アーカイブ化することを目的としている。なお、研究対象には「箏組歌」も含めている。研究方法として、伝承者への聞き取り、SPレコード等の貴重録音に残る演奏の調査、近年の放送局をはじめとした三曲(箏・三味線・尺八)録音の音質の変化(往年の録音技術と今日との相違点)に関する調査、伝承者からの楽曲の伝授と演奏保存を行い、その成果を精査して楽譜化し公開演奏を実施することが研究当初に計画していたことであるが、コロナ禍のため、伝承者への聞き取りと公開演奏に関しては規模を縮小した。 今年度の具体的な実績としては、別掲の公開演奏一覧のほか以下を成果として挙げる。 ①楽譜化した楽曲:箏組歌「羽衣」、「須磨」、「梅が枝」(以上データ作成のみ)、「翁三番叟」(作成途中) ②若手実演家への指導:東京藝術大学を修了した実演家(1名の尺八演奏家と1名の山田流箏曲家)に対し、今日演奏される事が特に少ない稀曲(「松風」「竹生島」「須磨の嵐」「芙蓉峰」「明烏」「花暦」)を研究代表者が伝授・指導を行った。 ③録音の音質の変化:楽曲の演奏アーカイブを制作を開始している。科学的根拠は見つけられていないが、昭和初期のまでSPレコード音源には独特の奥ゆかさがあり、それがどのような理由からか次年度以降も引き続き音響の専門家と連携し調査を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に立てた年次計画に基づいて順調に進んでいる。楽譜及び音源資料については当初予想以上に収集成果が上がった。同時にデジタルデータ化について膨大な時間を要するためにアーカイブ作業にやや遅れがみられるものの順調に進んでいる。成果発表会を実施することはできなかったが、若手演奏家への楽曲の伝授、コンサートや放送での演奏で研究成果を発信できたと考えていることから判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も、研究計画書に基づいて研究を展開する。本研究の第1の目的は、山田流箏曲の中でも特に「浄瑠璃物」について、近世邦楽、とりわけ、一中節、河東節等の三味線音楽との関係を文献研究から明らかにするとともに、過去の楽曲の録音、楽譜資料等の演奏表現に関する調査から、その特徴、演奏法、演奏表現(歌唱と器楽)を整理して、近年ほとんど演奏の機会がなくなっているこれらの曲を次代へとつなぐために楽曲の保護保存・アーカイブ化することであることから、楽譜制作について委託者と協働しつつ出来上がった楽譜を活用した、レクチャーコンサートにおいて検証しつつ成果を発表する。また、楽譜化については、引き続き浄瑠璃物及び箏組歌の楽譜の作成に取り組む(萩岡松韻)。なお、レクチャーコンサートについては、今年度は2回実施する予定であるが、コロナウィルスの対応を見ながら開催を判断することから実施できないことも視野に入れ成果の発信について動画配信も検討する。楽曲の伝承を受けた若手演奏家による公開演奏及び講習を実施したいと考えているが、これについては伝承者と研究分担者と精査しつつ慎重に検討を行う(萩岡松韻・野川美穂子・長谷川慎)。絶版となっているSPレコード及び私家蔵の磁気テープに記録された貴重音源については引き続きでジタルアーカイブ化作業を進める(久保田敏子・野川美穂子・長谷川慎)
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