研究課題/領域番号 |
21H00493
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
高山 明 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 教授 (60748333)
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研究分担者 |
桐山 孝司 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 教授 (10234402)
桂 英史 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 教授 (60204450)
和田 信太郎 東京藝術大学, 大学院映像研究科, 助教 (80648353)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ツアー・パフォーマンス / ポストドラマ演劇 / ソーシャリー・エンゲージド・アート / ツーリズム / アーカイヴ / ドラマトゥルギー / ワークショップ |
研究実績の概要 |
本研究では、ツアー・パフォーマンスを成立させる要素を「ツーリズム」と「ドラマトゥルギー」を二大要素と捉え、既存の都市ツアー(観光旅行、団体旅行、修学旅行)とこれまでのツアー・パフォーマンス(作品)を素材にしながら、都市と演劇の関係を考えるうえで不可欠なツーリズムとドラマトゥルギーの具体的な機能を探求しようとするものである。またこの研究は、翻って、二つの要素がどのようにツアー・パフォーマンスを成立させているかの分析へと通じるため、ツーリズムとドラマトゥルギーについての研究であると同時に、ツアー・パフォーマンスの制作方法についての研究にもなる。具体的な研究方法として、ワークショップという形式を採用した。現在行われているワークショップの多くは、演劇においては予定調和的な「教室」に、都市プロジェクトにおいては参加者の意思を尊重したという「アリバイ」になってしまっているが、共同で研究/制作するための手法として開発されたワークショップは、参加者が都市の中を移動することで成立する「なまもの」的なツアー・パフォーマンスを研究する手法として有効であり、本研究ではワークショップによる研究の可能性を示唆している。 本研究は、ワークショップによるツアー・パフォーマンス研究の開発を契機として、ツーリズムとドラマトゥルギーを実践的に分析する研究プラットフォームの確立をめざす点で、国内外の研究動向からいっても総合的かつ独創的な研究となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はアーカイヴ構築へ向けた準備を進め、情報共有に努めるとともに、実践面でも映像で記録された過去作品を参照しながら、筆耕(文字起こし)を進め、さまざまな形式の記録のメタデータ作成を進めた。またツアー・パフォーマンスの過去作品に関する二次情報(ドラマトゥルギーにとっての二次資料)の整理(再収集)に多くの時間を要することになった。ツアー・パフォーマンス作品の製作に必要な調査の方向性について検討することを目標としていた。しかしながら、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、現地調査やインタビューの機会が極端に減ってしまったものの、国外ではブリュッセル(ベルギー)、オッフェンバッハ(ドイツ)においてツアー・パフォーマンス研究の開発に取り組み、国内では長崎(長崎県)、金沢(石川県)に地域を絞り研究協力者を得ることができ、リサーチやドラマトゥルギーに必要な資源の確保に見通しが立ったことは特筆すべき成果である。また、アーカイヴ構築のための対面での作業やディスカッションをリモートでのトークやミーティング等で補い、アーカイヴに必要とされるデータの編集について調査・検討を進め、多くの研究協力者を得ることができた。その結果、次年度に向けてむしろ包括性の高い成果が得られる見通しが立った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、アーカイヴ構築に必要とされる二次資料のメタデータ化を進めるだけでなく、そのアーカイヴの構築方法を、よりオープンにワークショップ等を開催したりしながら進める方法論を検討するとともに、公開や共有のあり方についても集合知の編集といった方法論確立の実証可能性についても検討を進めてゆく。具体的には、ドキュメントの形式(映像、写真、テキスト)毎の事例を参照しつつ、さしあたってまずは映像資料のアーカイヴ化についての検討をより具体的に進める。さらにツアー・パフォーマンス作品の製作に向けて、地域における共同研究者や研究協力者との連携(とりあえず2022年度は長崎県を想定)をより密接に取り合いながら、「アジア」と「シーレーン」をテーマとして、現地調査や対面調査を進める予定である。
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