研究課題/領域番号 |
21H00499
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
松枝 到 和光大学, 表現学部, 教授 (20181696)
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研究分担者 |
平澤 剛 明治学院大学, 文学部, 研究員 (00573792)
半田 滋男 和光大学, 表現学部, 教授 (10366958)
橘川 英規 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化財情報資料部, 主任研究員 (20637706)
三上 豊 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化財情報資料部, 客員研究員 (60329018)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アーカイブ / 資料保存 / 近現代美術史 / 戦後美術史 / 前衛美術 / 前衛映画 / アート・ドキュメンテーション / オーラル・ヒストリー |
研究実績の概要 |
本研究は、領域横断的な芸術表現の検証に向け、周縁的資料を救出し、デジタルアーカイブ化による分析を通じて、作家・作品主義に止まらない横断的な1960-70年代芸術研究という新たな方法論の構築を目指すために開始された。初年度である2021年度は、1960-70年代の各作家アーカイブズの整理・分析に着手し、各資料の内容の把握と保存活動に努めた。 写真家や映像作家のアーカイブズにおいては、写真ネガやプリント、当時の掲載記事を整理・分析し、その一部のデジタル化を進めた。さらに、現存する映像作品のデジタル化や修復を行なうとともに、ネガやポジ素材の整理・分析を進めた。 また、せんだいメディアテークや長野県立美術館などの機関、アート・スペースと共同し、整理・分析を進めた資料群の一部を一般に公開した。こうした機関などとの共同により、作品・作家主義にとどまらず、作家の活動と表現者同士による人的交流を顕在化させ、横断的な1960-70年代芸術研究を推進することができた。また、資料がもつ潜在的な意義を社会へと提示することとなった。 アート・ドキュメンテーションにおいては、雑誌や紙資料に掲載された文章をまとめ、成果として『宮澤壮佳エッセイ選集』を制作した。オーラル・ヒストリーにおいては、日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴと共同し、作家や関係者への聞き取りを行ない、今後、テキストとしてウェブ上で公開する予定である。 このように、初年度は幅広く実践的な研究を行なうことができ、次年度に向けた研究の展開を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である2021年度は、糸井貫二アーカイブズ、ゼロ次元アーカイブズ、末永蒼生アーカイブズ、松澤宥アーカイブズの整理・分析に着手した。具体的には、資料群の内容を把握するとともに、ビラ、チラシなどの紙資料、パフォーマンスが記録された写真・映像資料、表現活動が掲載された当時の雑誌やグラフ誌などに分類し、保存活動に努めた。 写真家の平田実アーカイブズにおいては、写真ネガやプリント、当時の掲載記事を整理分析し、その一部のデジタル化を進めた。さらに、日本大学芸術学部映画研究会らの映画作品のデジタル化と修復、ネガやポジ素材の整理・分析を進めた。 一定の整理・分析が済んだ糸井貫二アーカイブズにおいては、せんだいメディアテークで開催された企画展「ナラティブの修復」展と共同し、一般への一部公開を行なった。さらに東京のアート・スペースであるイレギュラー・リズム・アサイラムにおいて、糸井貫二やゼロ次元など、60年代にパフォーマンスを展開した作家やグループの資料展の開催に共同した。また、松澤宥アーカイブズにおいては、長野県立美術館で開催された「生誕100年 松澤宥」展と共同し、その一部を一般に公開した。 アート・ドキュメンテーションにおいては、『美術手帖』編集長であった宮澤壮佳の文章をまとめ、成果として『宮澤壮佳エッセイ選集』を制作した。オーラル・ヒストリーにおいては、日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴと共同し、宮城県在住の作家である佐々木正芳や糸井貫二の遺族への聞き取りを行ない、今後、テキストとしてウェブ上で公開する予定である。 コロナ禍のため、対面での共同研究協議会は開催できなかったが、オンラインなどにおいて、美術館や研究機関、草の根で取り組まれているアーカイブ団体との意見交換などを進め、次年度のデジタル化作業への研究基盤を構築した。研究は順調に遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は、各アーカイブズの整理・分析、保存活動を進めることができたが、想定していたアーカイブズ全てに着手できてはいない。そのため、石子順造アーカイブズや夜行館アーカイブズ、岡部道男映画アーカイブズなど、未着手のアーカイブズの整理・分析を進める予定である。 また、2022年度は予定していたとおり、資料のデジタル化を主に進めていく。これによって、デジタルアーカイブを構築し、資料による芸術表現のネットワークの顕在化に努めたい。 さらに、コロナ禍により開催ができなかった共同研究協議会を行ない、資料アーカイブズをめぐる具体的な議論を推進させていく。また、資料保存をめぐるワークショップを開催し、具体的な問題点や可能性を共同して探り、最終年度の国際シンポジウムへと繋げていく。
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