研究課題/領域番号 |
21H00525
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
時本 真吾 目白大学, 外国語学部, 教授 (00291849)
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研究分担者 |
滝浦 真人 放送大学, 教養学部, 教授 (90248998)
曽雌 崇弘 目白大学, 外国語学部, 教授 (00381434)
宮岡 弥生 広島経済大学, 教養教育部, 教授 (10351975)
木山 幸子 東北大学, 文学研究科, 准教授 (10612509)
米田 英嗣 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (50711595)
時本 楠緒子 尚美学園大学, 総合政策学部, 非常勤講師 (10435662)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 語用論的推論 / 発生源推定 / 視点取得 / 因果的相互作用 / 社会性個人差 |
研究実績の概要 |
本研究は、言語コミュニケーションにおける意図伝達のメカニズムを、間接的発話を材料とした神経言語学的実験によって考察した。実験刺激は3人の話者による会話で、2つの要因によって操作された。即ち、(1)推論のための文脈が明示的か暗黙的か。(2)話者の意図が現在または過去のいずれに関わるかである。日本語母語話者24名の脳波を談話の聴覚理解中に頭皮上の64個の電極で記録した。間接的発話理解と時間処理に関する最近のfMRI研究を参考に、脳内に28の関心領域(Region of Interest (ROI))を配置した。各ROIにおける神経活動を推定した後、発話者の意図(YesかNoか)が認識される語の開始後200ミリ秒ごとに、シータ (5-7 Hz)、アルファ (8-12 Hz)、ベータ (14-28 Hz)、ガンマ (30-50 Hz)の各帯域について部分有向性コヒーレンス(Partial Directed Coherence (PDC))を計算し、28個のROI間の情報の流れを分析した。文脈の明示性が推論に及ぼす影響を調べるため、過去と未来の談話について、それぞれ文脈が明示的な条件と非明示的な条件間のPDC差分を計算した。その結果、文脈効果の現れとして、4つの脳波帯域について有意な有向ネットワークとその時間経過が描出された。分析の結果、文脈が過去に言及した場合にのみメンタライジングネットワークと時間認知ネットワークの間に有意なconnectivityが認められた。本研究では、このconnectivityを間接発話解釈における時間処理の現れと解釈し、間接発話における話者の意図理解の推論は、「協調の原理」を前提とした命題的論理の連鎖ではなく、複数の次元を備えた状況モデル構築処理であることを主張する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍での実験が難しいことは想定していたので、過去の実験データについて脳内因果的コネクティビティを再解析することで研究を進めた。投稿論文としてはまだ未完成だが、学会発表、招待講演で脳内effective connectivityの分析結果を披露ならびに議論する機会を複数得た。日本神経科学学会NEURO2022サテライトシンポジウム「誘発電位・事象関連電位の現在と未来」における「脳波から観た言語理解における視点取得と社会性個人差の関わり」、第45回日本神経科学大会での"Effective connectivity for perspective-taking in Japanese sentence comprehension and its correlation with autistic tendency," また東北大学言語学講演会における「発話理解における視点取得の脳内 effective connectivity とその時系列」が代表的なものである。言語処理における脳内因果的相互作用の分析は国内に例が無く、また国際的に見ても僅かなので、学会参加者や聴衆からかなりの反響を得ることができたのは喜ばしい。
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今後の研究の推進方策 |
脳内コネクティビティのより詳細な分析を意図して購入したBESA Connectivityによって既存データを再解析する予定である。2023年度の神経科学大会ならびに北米神経科学学会(Society for Neuroscience)での発表を意図して分析と考察を進める。
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