研究課題
本研究は、言語コミュニケーションにおける意図伝達のメカニズムを、間接的発話を材料とした神経言語学的実験によって考察した。実験刺激は3人の話者による会話で、2つの要因によって操作された。即ち、(1)推論のための文脈が明示的か暗黙的か。(2)話者の意図が現在または過去のいずれに関わるかである。日本語母語話者24名の脳波を談話の聴覚理解中に頭皮上の64個の電極で記録した。間接的発話理解と時間処理に関する最近のfMRI研究を参考に、脳内に28の関心領域(Region of Interest (ROI))を配置した。各ROIにおける神経活動を推定した後、発話者の意図(YesかNoか)が認識される語の開始後200ミリ秒ごとに、シータ (5-7 Hz)、アルファ (8-12 Hz)、ベータ (14-28 Hz)、ガンマ (30-50 Hz)の各帯域について部分有向性コヒーレンス(Partial Directed Coherence (PDC))を計算し、28個のROI間の情報の流れを分析した。文脈の明示性が推論に及ぼす影響を調べるため、過去と未来の談話について、それぞれ文脈が明示的な条件と非明示的な条件間のPDC差分を計算した。その結果、文脈効果の現れとして、4つの脳波帯域について有意な有向ネットワークとその時間経過が描出された。分析の結果、文脈が過去に言及した場合にのみメンタライジングネットワークと時間認知ネットワークの間に有意なconnectivityが認められた。本研究では、このconnectivityを間接発話解釈における時間処理の現れと解釈し、間接発話における話者の意図理解の推論は、「協調の原理」を前提とした命題的論理の連鎖ではなく、複数の次元を備えた状況モデル構築処理であることを主張する。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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