研究課題/領域番号 |
21H00576
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
片山 剛 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 招へい教授 (30145099)
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研究分担者 |
小林 茂 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 名誉教授 (30087150)
大坪 慶之 三重大学, 教育学部, 教授 (30573290)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 東洋史 / 日中戦争期 / 占領地統治 / 南京 / 上海 / 家主不在家屋 |
研究実績の概要 |
占領下南京における日本人商店の分布について、南京発行の『南京大陸新報』(および上海発行の『大陸新報』)所載の広告情報を整理する作業を、前年度に引き続き行い、蓄積データを増加させた。作業途中ではあるが、所謂「日本人街」、特に中山東路・太平路に分布することを改めて確認した。 台北国史館での史料調査が実現しなかったため、国内での文献調査に重点をおいた。その一つとして、日本占領下の南京と上海における不動産政策の比較を行った。その結果、日本人が住宅・商店用の家屋を賃借する場合の管理・監督の制度に大きな相違があることが判明した。 南京では、早くも1938年6月から、中国人家主が南京在住(在住家主)であれ、南京から避難して不在(不在家主)であれ、一律に、賃貸借契約については日本総領事館・軍特務の許可を得る必要があり、そして家賃は南京市政府の財政局に納入しなくてはならない制度が施行された。その結果、市政府は不在家主の家賃だけでなく、在住家主の家賃も一旦受領・保管するので、市政府が家屋や家賃に課す諸負担(家屋税など)を天引きすることが可能であった。 他方、上海では、日本側(陸海軍、総領事館、日本人居留民団)が管理・監督の対象としたのは、基本的に不在家主の家屋であり、その家賃は居留民団が受領・保管し、上海特別市政府が受領・保管することはなかった。この制度は1938年10月に始まる。そして1942年1月に南市地区を、43年2月に閘北地区を、日本側から上海特別市政府に移管し、市政府が不在家主の家屋や家賃を管理することができるようになる。これは南京に比べて4年弱遅い。この違いが生まれた原因は、陸海軍と外務省(その出先機関の総領事館)との間における占領地統治に関する方針の相違とともに、意思疎通の欠落(上海の場合)と関係していることが推測されるが、詳細は今後の課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度の計画において、台北の国史館で「南京土地登記文書」の調査を実施する予定であった。だが、台湾におけるコロナ対策のための外国人入国制限が継続されたため実施できなかった。そのため、本課題において主要と位置づける作業を開始できなかった。すなわち、国史館で収集する「南京土地登記文書」にもとづき、1筆ごとの土地区画について、①日中戦争前夜の土地・建物の状況、②日中戦争初期における建物の損壊・焚焼の有無、③その後の再建・修復の有無、④地主・家主が南京在住か否か等を調べ、これを1929年・1944年撮影の米軍の空中写真と比較対照し、1筆ごとの土地の形状・面積、建物の有無、建物の被害の有無や新築・改築・増築の有無を復元する作業、これを開始することができなかった。そのため「遅れている」と判断した。 なお予算の執行を自粛したため、資料集や文献を購入できなかったが、収集済みの文書史料および既存の資料集・文献を利用した研究を一定程度進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度と2022年度の2年度の計画において、台北の国史館で「南京土地登記文書」の調査を2回以上実施する予定であった。だがコロナ禍の継続等のため実施できなかった。しかし台湾もwith コロナの政策に転換しているので、国史館の入館制限をクリアできれば、国史館での調査が可能となる。そこで、2023年度に国史館調査が実施できれば、「南京土地登記文書」を可能なかぎり収集し、1筆ごとの土地区画について、①日中戦争前夜の土地・建物の状況、②日中戦争初期における建物の損壊・焚毀の有無、③その後の再建・修復の有無、④地主・家主が南京在住か否か等を調べ、これを1929年・1944年撮影の米軍の空中写真と比較対照し、1筆ごとの土地の形状・面積、建物の有無、建物の被害の有無や新築・改築・増築の有無についての復元作業を開始して、遅れを挽回する予定である。
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