研究課題/領域番号 |
21H00595
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
村上 恭通 愛媛大学, アジア古代産業考古学研究センター, 教授 (40239504)
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研究分担者 |
郭 新宇 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (10322273)
小畑 弘己 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (80274679)
福永 将大 九州大学, 人文科学研究院, 助教 (50847093)
國木田 大 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (00549561)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 瀬戸内海島嶼部 / 宮ノ浦遺跡 / 押型文土器前段階 / 海岸線復元 / 環境復元 |
研究実績の概要 |
新型コロナ感染拡大の状況下、本課題に関する科学研究費の採択連絡を受けて、研究分担者の連携はすべてオンラインのみで行い、一度たりとも対面での意見交換はできなかった。今年度の研究活動の中心は宮ノ浦遺跡における発掘調査にかかっていたが、発掘を予定していた8月は感染拡大期と重なってしまい、大学からの通達で基本的に学生の合宿しての発掘調査が禁止された。また上島町からも来島に関する自粛を求められ、学生の発掘参加が厳しく制限されることとなった。その結果、発掘参加者は大学の関係者を限定し、上島町内の協力者を中心とし、申請当初の計画から大幅に減じた面積の調査しかできなかった。しかし、狭い面積の発掘調査ながら、縄文時代の包含層であるⅣ層を検出でき、上下二層に分かれることがわかった。上層のⅣ-1層では中期~後期の縄文土器を主として含み、下層のⅣ-2層が目的の撚糸文土器を含むことがわかった。ただし、発掘面積が狭いことから土器の出土量も少なく、破片も小さく、土器そのものについては前年度出土品に関する所見に大きく加えるところは少なかった。 一方、遺跡の立地に関する研究は大いに進んだ。調査区のトレンチを部分的に下層まで掘り進めた結果、花崗岩の岩盤を検出できた。想定していた元見山から西に延び、現在の海岸へ位置の下に潜る埋没丘陵があり、その頂部に当時の生活域があったことが確実となった。また遺跡前面の宮ノ浦湾で実施した海底探査では、地形の把握が狭いながらも予想以上に把握でき、汀線から約500m離れても現界面の約10m下に平地が延びることが判明した。なお、宮ノ浦遺跡の西側にある湿地帯においてボーリング調査において、20m弱のコアを抽出した。とくに下層の堆積物について、年代測定、ならびに環境因子の調査に着手したが、コアを前にした議論が新型コロナ感染の影響でできず、今年度は十分に進められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染拡大の影響で、発掘調査を実施したものの、計画していた人数による発掘はできず、面積もわずかであった。そのため、縄文時代包含層の発掘も限られ、予想していた情報量を得られなかったことが大きな理由である。出土土器も少なかったために、土器の潜在圧痕調査に関してもわずかな試料しか試験できず、圧痕は得られなかった。研究分担者ともに宮ノ浦遺跡で議論するという機会も、またその後、対面して意見交換するという計画も実施にはいたらなかったため。また関係機関の新型コロナ感染拡大に関する制約も厳しく、類例調査も実施できなかった点も上げられる。さらに計画していた遺跡におけるサウンディング法によるボーリング調査が、島外車の来島に関して制限を受けて実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染拡大の影響が沈静化し、発掘調査に参加する研究補助者(学生)および研究協力者の数、そして期間を確保することが本研究に求められる最大のミッションである。また研究分担者と十分な意見交換ができる場を確保しなければならない。 狭い面積ながら旧地形に関する所見を得たことから、岩盤の広がりを探索すべく今後はサウンディング法によるボーリング調査を実施し、旧地形に関してさらなる情報を収集する。同時に海底地形に関しても今年度は狭い範囲の直線的な探査であったため、次回は面的な調査を実施しなければならない。 また検出する撚糸文土器が増加すれば、関係機関を訪れて類例調査ならびにそれら李調査担当者との意見交換を実施する。
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