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2022 年度 実績報告書

紙文化財補修用材料としての高機能化楮繊維の開発

研究課題

研究課題/領域番号 21H00617
研究機関独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所

研究代表者

稲葉 政満  独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 客員研究員 (50135183)

研究分担者 半田 昌規  広島市立大学, 芸術学部, 研究員 (20538764)
貴田 啓子  東京藝術大学, 大学院美術研究科, 准教授 (20634918)
藤本 真人  愛媛県産業技術研究所(紙産業技術センター), 技術支援室, 研究員 (20827521)
西田 典由  独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, アソシエイトフェロー (80502898)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード修復材料 / 紙質文化財 / 漉嵌め / ナノセルロース
研究実績の概要

虫食い文書の修復に用いられる漉嵌め法(leaf casting)用に開発した高機能化繊維である高度外部フィブリル化楮繊維は、本紙との接着性が高まるなど、新規な高機能材料として紙本修理の改善が期待される。しかし、石臼式摩砕機(マスコロイダー)による高度外部フィブリル化楮繊維の製造過程には、石臼の状態や原料繊維の状態など影響する因子が多いため、これらについて検討し、最適な製造方法を確立することを目的とする。
そのために、東京藝術大学に石臼式摩砕機を新規に導入し高度外部フィブリル化楮繊維を調製するための条件出しについて引き続き検討した。その結果、石臼の摩耗程度や前処理方法だけでなく、砥石そのものの摺り合わせが重要であったことが判明し、ナノセルロース製造のためのより精密な摺り合せ処理を同製品の納入業者に依頼して実施した。具体的には乾燥状体で石臼間のクリアランスを-100 μmにして1500 rpmで1-2秒の空摺を15回程度行い、下臼の加熱箇所(より多く当たっている箇所)を触って見つけ、その箇所を砥石で研磨する。この処置を繰り返し、その後クリアランス -100~-150 μm、1500 rpmで20-30分水磨り処理である。この処理法には慣れが必要なようで、その習得も今後の課題となった。なお、この処理で5 Lの水の排出時間が33秒から約50秒に上昇し、楮パルプの処理時間が大幅に上昇し、愛媛大学所有の同型機と類似した高度外部フィブリル化処理を行えた。しかし、繊維長や叩解程度の異なる楮パルプ間では、一方では処理中に生じるダマが多いことなど、より効率よく高度外部フィブリル化楮繊維を得るためには、さらなる条件出しが必要であることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

紙文化財補修材料として用いるための高機能化楮繊維を、石臼式摩砕機(マスコロイダー)を用いて調製するための条件出しについて引き続き検討した。その結果、石臼の摩耗程度や前処理方法だけでなく、砥石そのものの摺り合わせが重要であったことが判明し、ナノセルロース製造のためのより精密な摺り合せ処理を同製品の納入業者に依頼して実施した。具体的には乾燥状体で石臼間のクリアランスを-100 μmにして1500 rpmで1-2秒の空摺を15回程度行い、下臼の加熱箇所(より多く当たっている箇所)を触って見つけ、その箇所を砥石で研磨する。この処置を繰り返し、その後クリアランス -100~-150 μm、1500 rpmで20-30分水磨り処理である。この処理法には慣れが必要なようで、その習得も今後の課題となった。なお、この処理で5 Lの水の排出時間が33秒から約50秒に上昇し、楮パルプの処理時間が大幅に上昇し、愛媛大学所有の同型機と類似した高度外部フィブリル化処理を行えた。しかし、繊維長や叩解程度の異なる楮パルプ間では、一方では処理中に生じるダマが多いことなど、より効率よく高度外部フィブリル化楮繊維を得るためには、さらなる条件出しが必要であることが判明した。さらに、調製した高度外部フィブリル化楮繊維に粘剤であるポリエチレンオキシドを添加して、漉嵌め試験を実施した。こちらに関してもポンプの吸引速度などをさらに調整する必要がある。

今後の研究の推進方策

石臼式摩砕機(マスコロイダー)の石臼の摺り合わせ設定を丁寧に行うことで高度外部フィブリル化楮繊維が製造できるようになった。しかし、まだ製造時のダマの発生が多いなどの問題があるため、昨年度導入した離解器を用いて引き続き製造条件を検討する。その後、繊維長分布や外部フィブリル化程度の評価を繊維長分布測定装置により、内部フィブリル化程度をSimons染色法により光学顕微鏡を用いて行う。
製造した高度外部フィブリル化楮繊維を添加して漉嵌め法(サクションテーブルあるいはTappi手漉き器(既存)により強度測定用シートを作成し、その強度測定を行う。
さらに、紙修復者の立場から、実修復家による実験を指導し、その評価をとりまとめる(半田昌規)。
これらによって得られた結果は、文化財保存修復学会で発表し、修復家の評価も取り込んでいき、高度外部フィブリル化楮繊維の紙資料修復への実用化へつなげる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 紙文化財補修用材料としての高機能化椿繊の調製 -砥石摺り合わせの改善と外部フィブリル化処理-2023

    • 著者名/発表者名
      西田典由、貴田啓子、加瀬谷優子、岩田直美、藤本真人、半田昌規、稲葉政満
    • 学会等名
      文化財保存修復学会第45回大会

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公開日: 2023-12-25  

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