研究実績の概要 |
2021年度の成果である、国内の人口減少関連の既存研究をレビューした論文Inoue, T., Koike, S., Yamauchi, M. and Ishikawa, Y. (2021) "Exploring the impact of depopulation on a country’s population geography: Lessons learned from Japan", Population, Space and Place, 27, e2543、において、日本の総人口がピークに達した2008年以降の人口減少期間に焦点をあて、この期間に発表された人口減関連の多数に及ぶ研究成果を包括的・多面的に検討した。出生、死亡、移動といった3大イベントに関する既存研究は人口地理学者によってなされる傾向があるが、それ以外のテーマに関する既存研究は、人口地理学者のみならず、都市地理学、経済地理学、社会地理学など、地理学の多くの諸分野の専門家によって広く研究される傾向がある。 このレビューから得られた知見を踏まえて、次の3点を世界の人口地理学に対する新しい研究課題として提示した。第一に、国の総人口の減少はたいへん深刻な現象であり、人口地理学者はこの問題にもっと大きな関心を注ぐ必要がある。第二に、人口減少の分析にふさわしい新しい分析方法を、慎重にかつ積極的に開発する必要がある。第三に、人口地理学者は人口減少関連の研究成果を踏まえ、その政策的含意を積極的に述べるべきである。人口減少は、それが始まった、あるいは、間近に迫っている国々における人口地理学の地位を向上させる格好の機会であることを認識すべきである。
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