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2021 年度 実績報告書

インクルーシブ・リーダーシップ概念の拡張とその促進要因-多様な部下の管理に向けて

研究課題

研究課題/領域番号 21H00745
研究機関法政大学

研究代表者

坂爪 洋美  法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (10329021)

研究分担者 武石 惠美子  法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (70361631)
松浦 民恵  法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (60570778)
島貫 智行  一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (40454251)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード管理職 / リーダーシップ
研究実績の概要

当該年度に実施した研究の成果は次の2点である。まず、課長クラスの管理職を対象として、多様な部下を管理する管理職に求められるリーダーシップ行動の尺度を作成した上で、その効果を検証した。文献調査ならびにインタビュー結果の精査を通じて、多様な部下を持つ管理職に必要なリーダーシップ行動として、「ビジョンの共有」「多様性の尊重」「公平性」「傾聴 」という4つの行動次元を抽出した。そして、これら4つ行動次元からなるリーダーシップ行動尺度を開発した上で、先行研究で明らかにされている職場のダイバーシティの成果との関係を検討した。2132名の回答者のデータを分析した結果、以下の3点が明らかになった。まず、開発したリーダーシップ尺度を構成する4因子のうち、「多様性の尊重」がワークグループ・インクルージョン、協調性、創造性、働きやすさを高めること、「ビジョンの共有」「公平性」「傾聴」は、ワーク・グループ・インクルージョン、協働性、創造性を高めることが確認された。一方で、「ビジョンの共有」と「多様性の尊重」は、メンバー間のコンフリクトをも高める結果となった。さらに、多様な部下をマネジメントする際には、ビジョンを共有しつつ、部下の多様性を尊重するリーダーシップ行動が有効であることが確認された。多様な部下のマネジメントには、「ビジョンの共有」と「多様性の尊重」を中心としたリーダーシップ行動が求められるが、同時にこれらのリーダーシップ行動は必ずしも望ましい効果だけをもたらすわけではないことが確認された。
もう1つが、多様な部下を持つ管理職を対象としたインタビュー調査の実施である。ダイバーシティ推進の取組みを行っている企業に勤務し、かつ属性ならびに働き方が多様な部下をマネジメントする課長クラス8名に対してインタビューを実施した。インタビューは現在分析途中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前年度までに取得したデータを用いた分析は概ね予定通りに進行し、かつ分析結果を論文として投稿できたことから、これらの点については「概ね順調に進展している」と判断する。
一方で、多様な部下をマネジメントする課長クラスを対象としたインタビュー調査の実施は、当初対面での実施を模索したこともあり、実施がずれ込んでしまった。最終的に、諸事情を考慮し、オンライン上でデプスインタビューを実施することができたが、実施時期がやや後ろ倒しになったことから、「やや遅れている」と判断せざるを得ない。
しかしながら、インタビューの実施を検討している期間に、当初予定していなかった形で、先行研究の幅を広げることができた。具体的には、本研究が対象とする課長クラスの特徴をより詳細に把握すべく、部長クラスの仕事内容やその役割についてのレビューを行い、その対比を通じて、課長クラスの役割を明らかにするレビューを行った。また、課長クラスの行動をより広く捉えるために、リーダーシップ行動に加えて管理行動に関するレビューも行った。この点については「概ね順調に進展している」と判断できる。
以上をふまえ、予定通りデータ分析を行い、論文として投稿したこと、当初の予定にはなかった先行研究のレビューを追加したことに対しては肯定的な評価をするが、インタビュー調査の実施が予定よりも遅れたことから、総合的な評価は「やや遅れている」とする。

今後の研究の推進方策

今後の方向性として、以下の3点の実施を検討している。第一に、実施済みである8名の課長クラスの管理職を対象としたインタビュー調査の分析を進める。これまでの調査から、管理職のリーダーシップ行動の概略は明らかになりつつあるが、インタビュー結果の精査を通じて、多様な部下をマネジメントする課長クラスの管理職に求められるリーダーシップ行動の精査と再整理を行う。併せて、リーダーシップ行動の促進要因・阻害要因を明らかにする。
第二に、同一企業に所属する複数の課長職のインタビューを実施する。これまでに実施したインタビュー調査からは、管理職のリーダーシップ行動は、企業の人事制度や組織風土から大きな影響を受けていることが示唆される。そこで、同一企業に所属する複数の課長職に対してインタビューを実施し、人事制度や組織風土が与える影響を明らかにする。併せて、企業の人事部を対象としたインタビュー調査の実施を模索する。その目的は、課長クラスのリーダーシップ行動の規定要因としての人事制度の詳細を明らかにすることである。特に、現場と人事部との人事権の分担のあり方や人材育成について注目する予定である。
第三に、企業を対象として実施したアンケート調査(企業調査)の分析、ならびに部下を対象として実施したアンケート調査(部下調査)の分析を行う。管理職を対象とした調査データの分析結果から、課長クラスの管理職に求められる行動とその効果はある程度明らかになってきた。しかしながら、リーダーシップ行動の効果検証という観点からは、部下調査を用いた分析が不可欠である。併せて、管理職のリーダーシップ行動の規定要因の検討を目的として、企業調査の分析も行い、前述した企業の人事部を対象としたインタビュー調査の項目策定に反映させる。

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (12件) (うちオープンアクセス 8件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 管理職に期待される役割の変化2022

    • 著者名/発表者名
      坂爪洋美
    • 雑誌名

      産政研フォーラム

      巻: 134 ページ: 11-18

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] ダイバーシティ&インクルージョンを 促進する管理職に求められる リーダーシップ行動2022

    • 著者名/発表者名
      坂爪洋美
    • 雑誌名

      生涯学習とキャリアデザイン

      巻: 20(1) ページ: 63~81

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] ダイバーシティ経営に適合する人事管理と職場マネジメント―ドイツ・スイス企業インタビュー調査からの示唆―2021

    • 著者名/発表者名
      武石 恵美子、坂爪 洋美、松浦 民恵
    • 雑誌名

      日本労務学会誌

      巻: 22 ページ: 73~85

    • DOI

      10.24592/jshrm.22.1_73

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 男性の育児休業取得促進にどう取り組むか2021

    • 著者名/発表者名
      坂爪洋美
    • 雑誌名

      労政時報

      巻: 4016 ページ: 74~84

  • [雑誌論文] 裁判員の参加促進のために-裁判員の心理的・時間的負担軽減を図る2021

    • 著者名/発表者名
      武石恵美子
    • 雑誌名

      法律時報

      巻: 93(10) ページ: 17-23

  • [雑誌論文] 従業員自律型の人事管理制度はダイバーシティ経営の効果を高めるか2021

    • 著者名/発表者名
      武石恵美子
    • 雑誌名

      生涯発達とキャリアデザイン

      巻: 19(1) ページ: 75-91

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 『退職前行動』にみる発言メカニズム-勤続年数・愛着・多様性に注目して-2021

    • 著者名/発表者名
      松浦民恵
    • 雑誌名

      生涯発達とキャリアデザイン

      巻: 19(1) ページ: 27-37

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 副業について企業が知っておくべきこと2021

    • 著者名/発表者名
      松浦民恵
    • 雑誌名

      月刊 社労士

      巻: 2021年7月号 ページ: 20-21

  • [雑誌論文] 向社会的モチベーションの統制的側面2021

    • 著者名/発表者名
      シン ハヨン、島貫 智行
    • 雑誌名

      組織科学

      巻: 55 ページ: 61~73

    • DOI

      10.11207/soshikikagaku.20210601-1

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 障害者の職場定着を促す人事管理:社会的アイデンティティ考慮の観点から2021

    • 著者名/発表者名
      丸山 峻、島貫 智行
    • 雑誌名

      組織科学

      巻: 55 ページ: 54~66

    • DOI

      10.11207/soshikikagaku.20210201-4

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 大学生のインターンシップ効果測定尺度の開発―テキスト分析とパネルデータによる実証研究―2021

    • 著者名/発表者名
      初見 康行、梅崎 修、坂爪 洋美
    • 雑誌名

      日本労務学会誌

      巻: 21 ページ: 18~42

    • DOI

      10.24592/jshrm.21.3_18

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 多様なインターンシップ経験と効果 の一考察2021

    • 著者名/発表者名
      初見康行, 坂爪洋美, 梅崎修
    • 雑誌名

      日本労働研究雑誌

      巻: 733 ページ: 41-57

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 「退職前行動」にみる発言メカニズム─勤続年数、愛着、多様性に注目して─2021

    • 著者名/発表者名
      松浦民恵
    • 学会等名
      日本キャリアデザイン学会第17回研究大会
  • [学会発表] Promotion of Women’s Advancement in Japanese Companies2021

    • 著者名/発表者名
      武石恵美子
    • 学会等名
      Japan-EU Symposium
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ダイバーシティ経営の効果を高めるキャリア管理制度2021

    • 著者名/発表者名
      武石恵美子
    • 学会等名
      日本キャリアデザイン学会第17回研究大会
  • [学会発表] Inclusive leadership and knowledge sharing in Japanese women-centered workplaces2021

    • 著者名/発表者名
      Morinaga, Yuta; Sato, Yuki; Hayashi, Shohei; Shimanuki, Tomoyuki
    • 学会等名
      The 32nd International Congress of Psychology(International Union of Psychological Science)
    • 国際学会
  • [図書] 多様な人材のマネジメント2022

    • 著者名/発表者名
      佐藤 博樹、武石 恵美子、坂爪 洋美
    • 総ページ数
      224
    • 出版者
      中央経済社
    • ISBN
      978-4-502-40981-3
  • [図書] 1からの人的資源管理2022

    • 著者名/発表者名
      西村 孝史、島貫 智行、西岡 由美
    • 総ページ数
      268
    • 出版者
      中央経済社
    • ISBN
      978-4-502-40701-7
  • [図書] 女性自衛官2022

    • 著者名/発表者名
      上野友子、武石恵美子
    • 総ページ数
      264
    • 出版者
      光文社
    • ISBN
      978-4334045999

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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