研究課題/領域番号 |
21H00755
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
岡田 克彦 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (90411793)
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研究分担者 |
羽室 行信 関西学院大学, 経営戦略研究科, 准教授 (90268235)
藤澤 克樹 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (40303854)
月岡 靖智 関西学院大学, 商学部, 准教授 (50736709)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 行動ファイナンス / チャート分析 / 深層学習 / 畳込みニューラルネットワーク / 株価の予測可能性 / 効率的市場仮説 / 画像判断 |
研究実績の概要 |
資産価格評価モデルの研究においては、効率的市場仮説を背景に、企業価値(資本市場における株式価値)はファンダメンタル情報を反映しているとされてきた。しかし、現実の市場では、投資家が視覚情報に基づいて何らかのパターンを認識し、短期的な株価の上昇や下落を判断している可能性が指摘されている。それを実証するために、従来の研究では、テクニカル分析のシグナルに株価の予測可能性があるかを検証する取り組みが行われている。しかし、こうしたパターン認識に関する研究は、どのようにチャート形状を定義するかという問題がある。そこで本研究は、深層学習を用いることで、視覚情報を定量的に表現することを試みている。 具体的には、チャート画像を白黒のグレースケールで行列表記し、そのピクセル値が説明変数になるという深層学習モデルを構築した。この方法論については、Jiang et al.(Journal of Finance, 近刊予定)を踏襲した。深層学習の方法は、画像判断において優れた実績をあげている畳み込みニューラルネットワーク(Covolution Neural Network)を用いた。この手法を導入することで、画像の特徴量をより正確に抽出することができることが一般に知られている。 2021年度は、全上場企業のチャート画像を作成することに研究時間の大半を費やした。深層学習の効果は大量のデータを用いることで画像の特徴量を正確に抽出することが可能となり、精度が向上することが知られている。データは多ければ多いほど良いため、大量のチャート画像データの作成を実施した。日本に上場している3000社を超える上場企業の5日間のチャート画像を、1992年から2021年までの30年間分のチャート画像2200万枚の作成をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進捗状況については、やや遅れている。具体的には以下のような状況である。 ①研究目的と背景の明確化が適切に完了しているが、具体的な作業にかかるための打ち合わせが、コロナ禍において順調には進まなかった。 ②深層学習を用いて、画像の特徴量を正確に、かつ網羅的に捉えるためには、大量の画像データを用意する必要がある。この作業のプロトコルを決定する時期が遅れたため、作業開始時期が遅れ、データ整備が計画よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定は以下の通りである。 ①全上場企業については、1992年から2021年までのすべてのチャート画像データを用意する。 ②それらの画像データを初年度に購入した大規模データ処理用のハイパワーコンピューターのメモリに乗せる。メモリに全銘柄乗せることができない場合は、対象銘柄を流動性の高い500銘柄に絞ることで対処する(学習対象となる銘柄数が減少するが、500銘柄でも十分な数であり、学習精度には大きな影響はない)。 ③畳み込みニューラルネットワークを用いた検証を開始し、深層学習に必要なハイパーパラメータの探索をおこなう。構築した畳込みニューラルネットワークは対象銘柄の画像に含まれる特徴量と、その後のリターンの関係性を学習する。学習後に、未知の画像データをモデルに入力することで、未来時点において上昇する確率を計算する。 ④求められた確率に基づいて、上場銘柄をクロスセクションにランキングし、上位確率の銘柄群が、下位確率の銘柄群よりも未来のパフォーマンスが高くなるかどうかを検証する。また、この時点で組成したカレンダータイムポートフォリオの時系列リターンから、チャート画像に未来情報が含まれるかどうかを検証する。
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