研究課題/領域番号 |
21H00773
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研究機関 | 尚絅学院大学 |
研究代表者 |
長谷川 公一 尚絅学院大学, 総合人間科学系, 特任教授 (00164814)
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研究分担者 |
喜多川 進 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (00313784)
池田 和弘 日本女子大学, 人間社会学部, 講師 (20590813)
野澤 淳史 東京経済大学, 現代法学部, 講師 (30758503)
佐藤 圭一 一橋大学, 大学院社会学研究科, 講師 (40757093)
中澤 高師 東洋大学, 社会学部, 准教授 (50723433)
平尾 桂子 上智大学, 地球環境学研究科, 教授 (70158335)
TRENCHER GREGORY 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (90802108)
辰巳 智行 豊橋創造大学短期大学部, その他部局等, 講師 (40907911)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 気候危機 / パリ協定 / グラスゴー合意 / カーボンニュートラル / 脱炭素社会 / 政策波及研究 / 政策ネットワーク分析 |
研究実績の概要 |
日本でも「2050 年二酸化炭素排出実質ゼロ」宣言など、非国家アクターとしての地方自治体の気候変動への対応が注目を集めている。どのような自治体が気候変動政策にどの程度積極的で、自治体間の差はどのような要因によって生じているのだろうか。2020 年 3 ~ 6 月に 157 自治体(都道府県・政令指定都市・中核市・特例市・特別区)を対象に、郵送法により、首長意識調査(有効回答 93 票)と担当部局調査(同 146 票)を実施して分析した。首長調査では、気候変動全般への認識や国内・国際的対策への評価、政府のエネルギー政策への評価 などを尋ねた。担当部局調査では、自治体の計画・実施状況、特徴的な政策、実施段階での課題や困難。人員や予算など担当部局の組織に関わる設問で構成した。まず、排出ゼロ宣言別に「表明済み」「検討中」「予定なし」に分類し、注目している 動向や直面している問題や課題への回答を宣言状況ごとに確認した。さらに、意識調査の結果から 首長の積極性の違いを確認し、探索的な因子分析による因子得点から首長意識と宣言状況の関連を検討した。その結果、「表明済み」「検討中」と「予定なし」の違いを生みだす要因として、国内外の動向やエネルギー政策への 関心の高さ、気候変動政策への積極性,および域内の排出源を課題として捉える姿勢が見いだされた。首長意識の因子分析からは「表明済み」と「検討中」は、エコロジー的近代化に関する因子得点が高く、Business as usual シナリオからの脱却を目指す態度が強い傾向が認められた。「検討中」は,総じて「表明済み」に近い傾向であったが、中期的削減目標の引き上げに消極性が見られ、域内の再生可能エネルギー普及を課題として抱えていた。一方、「表明済み」は地域新電力や自治体 電力に関心を持ち、再生可能エネルギー普及への積極性が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請段階では、2011年から13年に実施したサーヴェイ調査に続いて、気候変動政策にかかわる主要官庁・政党・地方自治体・企業・業界団体・NGOなどを対象とするサーヴェイ調査を計画していたが、コロナ禍が長引くなかで、2022年度までは、一部を除いて、サーヴェイ調査を実施できなかった。実施できたのは、2020年度の自治体を対象とする郵送調査と、2050年カーボンニュートラルを宣言した神奈川県の主要自治体を対象とする中澤を中心とする聞き取り調査、野澤敦史によるストックホルム市スルッセン地区調査のみであった。これらはいずれも、順に辰巳ほか(2021)、中澤ほか(2023)およびNakazawa et al.(2023)、野澤(2023)として発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2023年度は、2011年から13年に実施したサーヴェイ調査の第2次調査にあたる、気候変動政策にかかわる主要官庁・政党・地方自治体・企業・業界団体・NGOなどを対象とするサーヴェイ調査を対面で実施したい。気候危機のような難しい問題については、オンライン調査では、表面的な回答しか得られない可能性が高く、対面調査が可能となる時期を待っていた。120団体程度を対象として、早期にサーヴェイ調査を実施したい。神奈川県の主要自治体を対象とする中澤を中心とする聞き取り調査についても、宮城県などを対象に同種の調査を行い、神奈川県の自治体の特殊性と普遍的な側面とを明らかにしたい。
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