研究課題/領域番号 |
21H00775
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
大出 春江 大妻女子大学, 人間生活文化研究所, 特別研究員 (50194220)
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研究分担者 |
田間 泰子 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 客員研究員 (00222125)
松岡 悦子 奈良女子大学, アジア・ジェンダー文化学研究センター, 協力研究員 (10183948)
森 未知 独立行政法人国立女性教育会館, 情報課, 専門職員 (20415350)
加藤 倫子 立教大学, 社会情報教育研究センター, 特定課題研究員 (40756649)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 産婆 / 助産婦 / 出産 / デジタル化 / リプロダクティブ・ヘルス / 助産録 / 産婆雑誌 / アーカイブ |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の近代化という文脈における助産職の仕事の意義をリプロダクティブ・ヘルスの観点からデータに基づいて評価することを主要な目的とする。そのための収集すべき資料は3種類ある。1つは地域の開業産婆(産婆会)保管資料の収集とデジタル化、2つめは主として大学図書館に保管されている産婆雑誌のデジタル化、3つめは助産院への訪問調査(インタビュー調査)である。 第一の開業産婆(助産婦・助産師)が保存していた文書資料と助産の実践記録としての助産録の収集とデジタル化は、本研究組織の研究目的のためであると同時に、資料としても広く活用出来る形にしていくことをめざしている。地方の博物館などの他機関に所蔵された産婆・助産婦関連の文書資料や助産録も一定期間、借用しデジタル化を進めた。デジタル化の終了したものはリスト化し、研究組織に参加しているNWEC(独立行政法人 国立女性教育会館)にデータとともに送付した。NWEC女性デジタルアーカイブシステムにおいて独立のデータベースとして公開に向け作業が進められている。 第二の日本の主要な戦前期の産婆雑誌のデジタル化作業による資料のデータベース化(一部の作業は残っているが)はほぼ達成することができた。ただし大学図書館(金沢大学および北海道大学医学部図書館)所蔵資料のデジタル化のため、これらの扱いについては研究組織内の利用にとどめており、今後の後続の研究者が活用できるようにするための方針は検討中である。 第三の助産院への訪問調査も本研究の大きな柱であるが、コロナ禍の影響により予定通りは進んでいない。これらの作業により、本研究は、助産職者の残してきた史料に焦点をあて、リプロダクティブ・ヘルスを歴史的かつ実証的に捉えようとする点においても、さらに文化資料の保存の観点からも重要な意義をもつものになったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インタビュー調査を予定していた調査対象者が、病気を理由に調査にご協力いただけなくなった。ご高齢により死亡された方もおり、調査対象を新たに探す必要が生まれた。 大学図書館の産婆雑誌のデジタル化作業とそれに基づく研究は、外部利用者に対する行動制限により、スケジュール上の遅れが生じた。しかし日中戦争以降の期間を対象とした産婆雑誌の分析作業に着手することはできた。
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今後の研究の推進方策 |
戦前の産婆雑誌のうち大学図書館所蔵情報をCiNiiで確認しデジタル化を進めた。金沢大学と北海道大学図書館の協力を得た。所蔵する大学図書館が必ずしも研究目的を理解しデジタル化に協力してくれるわけではなく、所蔵が確認されているが撮影作業ができない大学機関もある。それに加え戦前期の産婆雑誌の所蔵は大学図書館のなかでも限られていることと、医師向け雑誌のように保管されない傾向がある。したがって戦前および戦時下の日本の産婆と出産(避妊、堕胎も含む)との関わり、そして国家(内務省→厚生省、警察、そして文部省)、さらには医師が産婆とどのように関わっていたのかを知る上で産婆雑誌のデジタル化の継続は重要である。産婆雑誌には母子・乳幼児・出産に関する情報が集積しておりこれをデータベース化することは今後のこの分野の研究にとっても極めて重要だと考えられる。なお、CiNiiからの検索ではヒットせずに、各大学図書館OPACで判明する雑誌もあることも踏まえ、この作業を継続することが必要である。
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