研究課題/領域番号 |
21H00776
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
數土 直紀 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (60262680)
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研究分担者 |
前田 忠彦 統計数理研究所, データ科学研究系, 准教授 (10247257)
神林 博史 東北学院大学, 教養学部, 教授 (20344640)
小林 大祐 金沢大学, 人間科学系, 教授 (40374871)
永吉 希久子 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (50609782)
ホメリヒ カローラ 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (60770302)
吉川 徹 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (90263194)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | COVID-19 / 主観的幸福感 / メンタルヘルス / 社会関係資本 / 社会的信頼 / 社会的格差 / オンラインパネル調査 |
研究実績の概要 |
本プロジェクトでは、先行して2021年3月に、新型コロナウィルス感染拡大に関するオンライン調査を実施していた。この調査での回答者をベースにして、2021年7月、2021年11月、そして2022年3月にオンラインパネル調査を実施した。同一の回答者について、新型コロナウィルス感染拡大期における意識・行動の変化を追いかけるデータを蓄積したことで、新型コロナウィルス感染拡大が社会に対してどのような影響を及ぼしたのかが分析可能になった。特に注目されるのは、2021年7月は東京オリンピック2020が開催された時期に相当し、さらにこの時期にデルタ株による新型コロナウィルス感染拡大が進んだことと、2021年11月は新型コロナウィルスワクチンの接種が進み、一時的に新型コロナウィルス感染が収束していたことである。新型コロナウィルスの感染拡大が一気に進んだ時期と、新型コロナウィルスが一時的に収束した時期の双方を含むパネル調査データは、新型コロナウィルスの影響を明らかにするうえで貴重なデータとなっている。 2021年度は、調査の実施に加えて、すでに2020年度に実施されていたもう一つのオンラインパネル調査のデータを分析する作業をおこなった。データ分析を通じて、新型コロナウィルスの感染拡大が人びとの経済状況、主観的ウェルビーイング、そしてメンタルヘルスに与えた影響が明らかになった。本プロジェクトでは、分析の結果を日本社会学会大会で報告し、その成果を2本の英語論文にまとめた。ひとつは『理論と方法』に特集論文として掲載され、もうひとつはSSM-Population Healthに研究論文として掲載された。なお、分析の結果は、本プロジェクトが立てた仮説「新型コロナウィルスの感染拡大は、人びとの生活に対して負の影響をもたらし、その影響の大きさには社会格差が存在する」を支持するものとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年7月から2022年3月にかけて3回のオンラインパネル調査を予定通りに実施し、無事に終了させることができた。得られたデータをもとにして基礎分析を進め、2021年から2022年にかけて人びとの生活、意識、そして行動にどのような変化が生じていたのかを確認した。その一方で、データの回答の一部に整合性を欠くものが少なからず見いだされた。具体的には、オンラインパネル調査なので回答者は同一であるはずなのに、本人属性や、家族構成が異なっているなどといった結果が見いだされた。これらの結果は、データの信頼性を損なわせるものなので、何らかの対応が必要と判断される。具体的には、データクリーニングを丁寧におこない、非整合的な回答が生じている原因を明らかにし、データを適切に修正するか、それが不可能な場合はデータから取り除くことが必要となる。 2021年度は、オンラインパネル調査の実施に並行して、本プロジェクトに先行して2020年度に実施されたSSPW2020-Panel調査のデータ分析をおこなった。また分析結果は、2021年11月に開催された日本社会学会大会で報告された。日本社会学会大会での学会報告をもとに、さらに分析を進め、2本の英語論文を執筆した。1本は、新型コロナウィルスの感染拡大が始まった時期に人びとの生活にどのような変化が起き、それにともない人びとの主観的ウェルビーイングとメンタルヘルスにどのような変化が生じたのかを分析したものである。もう一本は、都道府県で新型コロナウィルスの感染率が異なることに着目し、(都道府県別の)感染率の変化によって生活満足感がどのように変化し、そしてその変化が所属する社会階層によってどのように異なるかを分析したものである。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度では、2021年度に実施したオンラインパネル調査(SSPW2021-Panel)のデータ分析を本格的に展開する。そのためには、1)データのクリーニングを丁寧におこない、非整合的なデータが生じた原因を特定し、非整合的なデータの修正・除去をおこなう、2)そのうえで当初の仮説にもとづいた分析をおこなう、3)データの分析が進み、一定程度の知見が得られたならば、分析結果をまとめ学会報告をおこなう(国際学会での報告準備を進めるとともに、先行して国内学会での報告をおこなう)、4)学会報告で得られたフィードバックをもとにして、SSPW2020-PanelとSSPW2021-Panelから得られた分析結果を再検討し、必要があれば再分析もおこなう。一定程度知見が整理された段階で、国際査読誌での掲載を目指し、英語論文の執筆にとりかかる。
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