研究課題
成長期における朝食欠食が近年問題視されており、心身の発達に悪影響を与えることが危惧されている。朝食摂食頻度と学力の相関が知られる一方、成長期の朝食欠食が脳機能へ与える影響は明確に示されていない。そこで本研究では活動期、つまり暗期の前半6時間欠食を朝食欠食として定義し、成長期マウスを用いて慢性的な朝食欠食の脳機能への影響について評価を行った。5週齢のC57BL/6マウスを用い、前述の条件下で3週間飼育したマウスを朝食欠食群とした。対照群として、自由摂食群と暗期後半6時間欠食させた夕食欠食群を置いた。朝食欠食による記憶機能への影響を調査するため、各種行動試験を行った。海馬の関与が知られるY字迷路試験や短期位置認識試験では、朝食欠食群において記憶能力の低下がみられた一方、嗅周皮質の関与が知られる短期新奇物体認識試験では、各群の記憶能力に差は見られなかった。つまり、慢性的な朝食欠食が海馬依存的な記憶能力の低下を引き起こすことが示唆された。そこで、その作用機序を明らかにするため、海馬についてRNAシーケンスによる網羅的遺伝子解析を行った。抽出された発現変動遺伝子についてGene Ontology解析を行った結果、自由摂食群と朝食欠食群の比較では細胞増殖、細胞死に関連するタームが抽出された。以上より記憶能力の低下は、海馬における細胞代謝の異常によることが示唆された。今後は海馬神経細胞数やそのアポトーシス率などについて解析を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
2021年度に計画していた①幼若期欠食モデルマウスの作出、②欠食が記憶・学習に及ぼす影響の解明と、その機序の解析、③欠食がエネルギー代謝に及ぼす影響の解明と、その機序の解析、および、④欠食が腸内細菌叢に及ぼす影響の解明、について、ほぼ計画通りに実施できた。特に、記憶について種々の条件で十分な評価を行い、結果を得たことで、今後の研究計画を考えることが出来た。
当初の計画通り、②欠食が記憶・学習に及ぼす影響の解明と、その機序の解析、③欠食がエネルギー代謝に及ぼす影響の解明と、その機序の解析、④欠食が腸内細菌叢に及ぼす影響の解明、⑤欠食が与える影響の持続性の検討、および、⑥腸内細菌叢の改善による欠食の影響緩和の検討、について研究を継続、もしくは、開始する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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