研究課題
成長期における朝食欠食が近年問題視されており、心身の発達に悪影響を与えることが危惧されている。朝食摂食頻度と学力の相関が知られる一方、成長期の朝食欠食が脳機能へ与える影響は明確に示されていない。そこで本研究では活動期、つまり暗期の前半6時間欠食を朝食欠食として定義し、成長期マウスを用いて慢性的な朝食欠食の脳機能への影響について評価を行った。5週齢のC57BL/6Nマウスを用い、自由摂食群(AL群)と朝食欠食群(SB群)の2群にわけて21日間飼育した。AL群は一日中餌を摂取できる状態で飼育し、SB群は活動期前半(ZT12~18)の6時間給餌を停止して飼育し、これをもって活動期前半欠食すなわち朝食欠食とみなした。行動試験はZT14~16の間に行ったが、行動試験当日にはSB群も給餌停止をせず、マウスが自由に餌を摂取できる状態にし、空腹の影響がないようにした。SB群はAL群に対して体重増加量や飼料同化率が増加した。このことから先行研究と同様の朝食欠食モデルが作れていると判断した。行動試験当日のZT12~14(朝食にあたる時間)にも両群ともに同程度餌を摂取していたことから、空腹状態でないと判断した。自発活動量は両群間に差はなく、AL群に対してSB群において行動パターンの変化は確認できなかった。行動試験は短期空間的記憶能力を評価する位置認識試験、空間作業記憶能力を評価するY字迷路試験を行った。AL群に対してSB群では両試験において記憶能力の低下が見られた。上記より、空腹は記憶力低下には作用しておらず、朝食欠食によって記憶力低下が引き起こされた可能性が強く示唆された。
2: おおむね順調に進展している
おおむね計画通りに研究を進めている。
⑤欠食が与える影響の持続性の検討を進める。幼児期の欠食で受けた影響が、欠食解消後も持続的に維持される可能性を検証するため、これまでに確立した幼若期欠食モデルマウスについて、一定期間欠食を続けた後、通常摂食状態で飼育する。その後、欠食の影響が持続的に維持されているか検討する。心身の発達に重要な幼児期に受けた影響の一部、例えば、脳への影響などは、不可逆なものとして固定化され、長期間もしくは生涯にわたりその影響が維持される。欠食の影響についてもその持続性を検討する。
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