研究課題
本研究の目的は、比較教育学の知見を活かして「教育の輸出」現象の全容を分析し、構造的な問題を明らかにすることである。2008年の世界的な財政危機(リーマンショック)を契機に、世界中で「教育の輸出」が始まっているが、その実態や全容は解明されていない。本研究では、比較教育学の蓄積を背景に、経済取引による政策移転の実態を解明することを目的とする。5年間の研究期間で①世界的な市場規模を推計し、②国際的な資本移動の動向を分析することで「教育の輸出」現象の全体像を把握し、③構造的な問題を明らかにする。これにより、経済取引による政策移転を的確に説明する理論を立てること目指している。5年計画の2年度である2022年度は、イギリスとフィンランドの各政府から教育の輸出の市場規模データが公表されたことにより、世界的な市場規模の推計に必要な方法論の模索に新たな知見が得られた。特にイギリスでは、推計に用いるデータセットを公開し、その信頼性などの評価も具体的に記している。加えて、これまでの推計データの問題点も指摘されていて、非常に有用なレポートとなっている。本課題でも、イギリスのデータセットを参考に、日本および国策として教育の輸出を進めるアクターの推計を試みた。これにより、本研究の目的の①世界的な市場規模の推計についてはめざましい進展が見られた。また、経済取引による政策移転を的確に説明する理論を立てるという目標に対して、reference societyという新たなタームを導入することで、これまでの議論の齟齬がある程度解消されるという見通しが持てた。
2: おおむね順調に進展している
昨年度はパンデミックによる渡航制限で海外調査が悉くできず、かなりの遅れが発生したが、今年度に入って渡航制限が緩和され、関係者へのインタビュー調査や資料収集などが可能になり、かなりの部分を取り戻すことができた。また、イギリスの推計手法の分析と関係者へのインタビュー、新たな概念枠組みの獲得により、一部で計画以上の進展が見られた。これらを当初の計画と照らして総合的に勘案すると、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると評価できる。
遅れを取り戻しつつあるが、今後は①市場推計をなるべく早い時期に完成させ、それを公表すること、②輸出データだけではなく、輸入の推計に取り組むことで、国際的な資本移動の動向を把握すること、③reference societyの概念を用いて新たな研究枠組みを提案すべく、立論すること、の3点に焦点化して当初の目的の達成を目指す。
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Vagval i Skolans Historia
巻: 1 ページ: n/a
Research and Practice in Technology Enhanced Learning (RPTEL)
巻: 18(24) ページ: n/a
10.58459/rptel.2023.18024
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