研究課題/領域番号 |
21H00869
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研究機関 | 仙台白百合女子大学 |
研究代表者 |
牛渡 淳 仙台白百合女子大学, 人間学部, 教授 (30151856)
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研究分担者 |
藤本 駿 高松大学, 発達科学部, 講師 (10582025)
阿内 春生 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 准教授 (10608839)
鈴木 久米男 岩手大学, 教育学研究科, 教授 (50733937)
櫻井 直輝 放送大学, 教養学部, 准教授 (60785385)
木場 裕紀 東京電機大学, 未来科学部, 准教授 (70804095)
藤村 祐子 滋賀大学, 教育学系, 准教授 (80634609)
川口 広美 (前田広美) 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (80710839)
梅澤 収 静岡大学, 教育学部, 特任教授 (90223601)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 教員スタンダード / 教員評価 / 教員免許更新制度 / 教員育成指標 / 教師教育 / 社会的公正 / アカウンタビリティー / 質保証 |
研究実績の概要 |
アメリカ調査に関しては、コロナのために訪問調査は来年度に回して、今年度は、文献研究と翻訳等を中心に行った。まず、現在、カリフォルニア州の教員免許更新制度は廃止されており、現職教員の質保証は、免許更新制度によるのではなく、学区教育委員会と教員組合が共同で作成した教員評価システム(教員スタンダードをベースに作成)により、実施されていることを詳しく明らかにした。また、教員スタンダードによって、社会的公正の概念がどのように実現しようとしているのかについても、文献と資料を基に検討した(詳細は、来年度の訪問調査によって明らかにする予定)。また、教員の質保証に関連する、アメリカの教員人事システムがどのようになっているのかを明らかにするため、文献調査を行った。さらに、カリフォルニア州の教師教育政策やスタンダード政策を考える視点を得るために、全米の教師教育政策と新しいアカウンタビリティー政策の必要性を説いた本を分担者2名が翻訳し出版した。また、研究代表者と研究協力者によって、日米の教員スタンダード政策について「社会的公正、多様性、自主性」の観点から明らかにした著書を出版した。 日本研究については、教員育成指標のその後の改正の動向や運営実態、教職員の認識等について東北地方の実態調査を行った。また、都道府県教育委員会による教員研修及び研修体系と教員育成指標との関連性についても、その実態を明らかにした。さらに、東北のみならず、全国的動向を探るために、京都を中心とした関西地区の実態調査も実施した。また、事務職員の育成指標についても調査を行った。さらに、新しく発表された「令和の日本型教師改革」答申に対して、包括的な改革の視点から批判的な検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アメリカ研究に関しては、コロナのために訪問調査が難しく、資料の入手が困難であったが、オンラインによる資料収集やオンラインによるインタビュー等を行い資料の入手を行うことができた。その結果、教員スタンダードが、カリフォルニア州の教師の質保証の中心として位置付けられていることが分かった。例えば、長い間カリフォルニア州では、教員免許更新制度により現職教員の質保証が行われてきたが、免許更新制度が廃止され、代わって、教員スタンダードの導入により、現職教員の質保証は、学区教育委員会が教員組合と協働で開発した教員評価制度(教員スタンダードをベースとした)によって行っていることが明らかになった。また、全米で高い評価を受けている教師教育関連の著書の翻訳を行うことにより、本研究の対象であるアメリカの教師教育の実態や基本的課題について明らかにすることができた。さらに、アメリカの教員スタンダードと日本のコアカリキュラム・育成指標について、「社会的公正・多様性・自主性」の視点から明らかにした著書を出版することにより、本研究のテーマであるカリフォルニア州の教員スタンダード政策を研究する視点を、より明確にすることができた。 日本研究に関しては、教員育成指標に関する調査が順調に進んでいる。特に、都道府県教育委員会や政令市における教員研修体系と教員育成指標との関連性についての実態を明らかにすることができた。同時に、事務職員の育成指標の調査も行った。また、研修の種類ごとに教職員の意識の違いと特徴を明らかにすることができた。さらに、2022年に出された「令和の日本型教師改革」に関しても、包括的改革という視点から批判的検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度であるため、半数以上のメンバーと共にカリフォルニア州の訪問調査を実施する予定である。その際、日米の教員スタンダード政策を教師教育に関わる包括的な視点から明らかにすることが本研究の課題であったことから、教師教育以外の教員人事や教育行政制度、教育政策全般についても可能な限り調査してきたい。特に、教員スタンダードが、カリフォルニア州の教師の質保証にかかわる中心的な役割を果たしていることから、なぜそのようなことが可能になっているのか、その理由と背景を明らかにしたい。具体的には、スタンダードの作成と管理は誰が行っているか、教員スタンダードに対する大学や教員組合の意識と作成・管理への参加状況等が中心となる。また、スタンダードを基にした各学区の教員評価制度の作成や運用の実態を明らかにすることで、わが国との相違も明らかになると思われる。さらに、教員スタンダード政策によって、「社会的公正」がどのように確保されているのか、教師教育における社会的公正の実現に、教員スタンダードがどのような役割を果たしているかも、調査の大きなポイントになる予定である。なお、9月には、「日米教師教育国際シンポジウム」を開催し、本研究の成果の一つとして公表したい。 日本の研究に関しては、①教員免許更新制度廃止と今後の研修の在り方における育成指標の関わり、②育成指標と教員採用との関係、③育成指標と大学の教職課程との関係、の三点について調査を進める予定である。特に、「令和の日本型教師改革」答申の影響を軸に、教員育成指標の動向に注目したい。 最終的に、最近の改革動向も含めて、日米の教員スタンダードを核とした教師の質保証政策の構造と課題を明らかにしたい。
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