研究実績の概要 |
2021年度は,生成検索(思い出すために労力を費やしたり,追加となる手がかりを生成したりする検索)と直接検索(労力を費やすことなくただちに記憶が頭に浮かぶ検索)の主観的判断の個人差を検討するための実験を実施した。これらの実験から,自記式質問紙尺度によって測定された内受容感覚の敏感さが高いほど直接検索判断が多いことが明らかとなり,この関連は検索潜時などの直接検索の特徴を統制しても有意であった。さらに,内受容感覚の敏感さは検索時に生じた身体感覚や情動反応を媒介して直接検索判断と関連することが明らかになった。以上の知見は,記憶検索におけるボトムアップ経路が直接検索判断を導くことを示唆しており,さらには内受容の予測誤差が記憶検索の直接性を説明することを示唆している。以上の知見はMemory and Cognition誌に発表された(Matsumoto, Watson, Fujino, Ito, & Kobayashi, 2022)。 抑うつ症状および不安症状は直接検索判断に関連していないという知見と(Matsumoto et al., 2022),うつ病患者では直接検索判断が多いという知見(Hallford & Matsumoto, 2022)の双方の知見が得られ,精神疾患と直接検索判断の関連については追試および境界条件の確認が必要であると判断された。 以上の研究を進める傍ら,生理反応測定のための環境構築を完了させ,2023年度に実施する研究の準備を整えた。
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