運動学習や記憶形成において、学習後に休憩期間を置くことが運動成績の向上や運動記憶の固定化を助ける現象(オフライン学習)が多くの行動実験から示されているが、休息中の安静時脳活動が学習に及ぼす影響は不明である。そこで本研究は、安静時脳活動が運動の学習や記憶形成に果たす役割を、安静時の脳活動に対して経頭蓋直流電気刺激 (transcranial Direct-Current Stimulation: tDCS) による操作、および機能的磁気共鳴画像法 (functional Magnetic Resonance Imaging: fMRI) による計測の両方を用いて直接的に検討する。これにより、運動学習後の安静時脳活動が学習・記憶に与える影響を因果的に検証するとともに、tDCSによるニューロモジュレーションを使った効果的な学習方法の開発を目指す。まず、tDCSが運動学習に及ぼす効果について確認するために、先行研究の追試を含めた検証を行う。運動学習課題として、視覚追随運動(画面上をランダムに動くターゲットを、マウスカーソルで追いかける課題)や系列運動課題(示指から小指を用いて、特定の順番で繰り返しボタン押しを行う課題)を用いる。2つの課題ともに視覚運動学習で頻繁に使われてきた代表的な課題であり、その学習効果の行動特性は良く知られている。実験では、被験者が使用する手と反対側の一次運動野をtDCSにて陽極または陰極にて刺激することにより、運動学習が促進または抑制されるかを検証する。
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