グラフェンや遷移金属カルコゲナイド系物質(TMDC)などの系の厚さが一原子層である原子膜物質では、エッジや表面などによって、特異な電子物性が発現する。さらに近年、物質科学をトポロジー(位相幾何学)という数学概念で捉え直すことで、結晶中のブロッホ電子が有する波動関数の位相情報によって、エッジ・ヒンジ・コーナーなどの物質境界に出現する特異な局在状態が規定されることがわかってきている。エッジやコーナーなどの境界での波動関数の局在は、ナノスケール材料における局在磁性や完全伝導チャンネルの起源となる一方、フォトニクス結晶の言葉に焼き直せば、光の局在(閉じ込め)や高効率光伝搬に対応する。これらトポロジカルに保護された状態は、新しい電子・光デバイス設計への源泉となるものである。 本研究では、二次元原子膜の電子波動関数が有するトポロジーに着目し、物質の機能を設計する理論を整備する。さらに、原子膜物質で得られた知見を、より実装しやすい電磁場系に展開を図り、フォトニック結晶の設計へと繋げる。原子膜物理とフォトニクスを分野横断する研究を推進し、新しい光・電子デバイスのベースとなる基礎物性の理論的解明へと貢献する。本研究課題によって、二次元原子膜物理からフォトニック系にわたる、新たなトポロジカル状態の発見や制御の指針を提示する。さらに、「トポロジカル機能設計」の基礎学理の構築に貢献する。
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