研究課題
当該年度では、前年度から継続して原子層物質を用いた電流揺らぎ測定系の構築と、高次トポロジカル絶縁体状態の発現が期待されるWTe2を用いた電流揺らぎ測定を実施した。前年度の測定結果から、WTe2のような低抵抗物質で電流揺らぎ測定を行うには、当初想定していた電圧バイアスとLC回路による信号増幅を組み合わせた測定系ではなく、電流バイアス下における素子の電圧揺らぎを室温アンプにて増幅する測定系の方がより適していることが判明した。新たなサンプルホルダの作製及び配線の変更によって測定系を改良し、数十nm程度の膜厚のWTe2素子を用いて測定を行った。その結果、WTe2のバルク状態に由来するショットノイズの観測に成功した。一方、パワースペクトル密度とバイアス電流の間の比例係数に相当するファノ因子は、理論的に期待される1/3より大きく、またポアソン過程に相当する1よりも大きい値となった。これは測定系もしくは素子構造に起因して余分な電流揺らぎが測定されている可能性を示唆している。このような因子を排除するため、より素性が明らかな標準サンプルを用いた測定系の最適化を現在実施中である。上記と並行して、高次トポロジカル絶縁体相が期待されるTd-MoTe2における超伝導非相反伝導効果に関する研究、膜厚と超伝導状態の関係性の解明、及びスピン軌道相互作用に関する研究を実施した。超伝導非相反伝導効果に関する研究では論文1本を出版した。また、膜厚の異なる複数の素子を用いて、残留抵抗率比やキャリア密度と超伝導転移温度の関係を明らかにした。この結果に関して国際会議発表及び論文投稿1件を実施した。加えて、高次トポロジカル絶縁体相でも重要な役割を果たすTd-MoTe2のスピン軌道相互作用について、弱反局在効果の解析からスピン軌道相互作用の大きさ及び対称性について議論し、次年度に開催される国際会議に投稿を行った。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Physical Review Research
巻: 6 ページ: 013132-1-13
10.1103/PhysRevResearch.6.013132