研究課題/領域番号 |
21H01029
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
長尾 全寛 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (80726662)
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研究分担者 |
大島 大輝 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (60736528)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スキルミオン |
研究実績の概要 |
本研究では、高密度スキルミオン粘性流の観測及びその新規輸送特性の創出に挑戦する。磁気スキルミオンは、トポロジカルな不変量によって安定な粒子として振る舞う。特に、超低密度電流によってトポロジーに由来する独特の輸送特性を示すことから、スキルミオンを情報キャリアとして利用する応用的価値にも注目が集まっている。実際、孤立した単一スキルミオンの輸送特性解明および制御を目的とした研究が理論と実験の両面から集中的に行われてきた。一方、スキルミ オン粒子間相互作用が存在する高密度スキルミオンの集団的運動による輸送特性は未解明である。高密度スキルミオンの集団的運動は非圧縮性トポロジカル粒子流として分野横断的な興味深い舞台を提供し、さらに、高速処理・高記録密度メモリ等の実現を目指す上でその解明は重要な課題である。当該年度では、スキルミオン流の粘性の観測に取り組んだ。最初に、積層超薄膜はTa/Co20Fe60B20/Ta/MgO/Ta(以下、CoFeB)を対象に、ワイヤ状試料に狭窄を施して、磁気光学カー効果顕微鏡によってスピン軌道トルクで駆動する高密度スキルミオンの運動を追跡する実験を行った。粘性が全く存在しない場合には、スキルミオン流は直線的に発散するような流れを示すはずだが、期待される効果は得られなかった。これは、CoFeBのスキルミオン密度の低さが原因であることが考えられた。そこで、高密度スキルミオンが現れることが知られているPt/Co/Taに対象を変更した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初対象としたTa(5nm)/Co20Fe60B20(1nm)/Ta(0.08nm)/MgO(2nm)/Ta(5nm)では、スキルミオン密度が不十分であることが判明した。各構成層の厚さを変更して、 スキルミオン密度の調整に取り組んだが、この試料はスキルミオン形成条件の範囲が非常に狭く、わずかに厚さを変更しただけでスキルミオンが消失してしまう問題に直面した。例えば、僅かに磁気異方性の変化でもスキルミオン相が消失した。さらに、スパッタ成膜装置の元素を変更した後に戻すと、前回の成膜条件でもスキルミオン形成条件が変わってしまい、成膜環境にも非常に敏感であることが分かった。また、スキルミオンが形成する構成においても、ブラウン運動によって常に動いており、安定的な駆動制御が困難であった。そこで、スキルミオン密度が高く、形成条件が広く、調整が容易なPt/Co/Taに対象系を変更した。ただし、Pt/Co/Taのスキルミオンサ イズは100-200nm程度のため磁気光学カー効果顕微鏡(LTEM)では空間分解能が不十分であるため、観察装置をナノサイズの磁気構造が観察可能なローレンツ電子顕微鏡(LTEM)観察に切り替えた。対象系および観察方法を変更したため、やや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、Pt/Co/Taに電流印加を行って、スキルミオン粘性のローレンツ電子顕微鏡観察を実施する。名古屋大学超高圧電子顕微鏡施設には電流印加ホルダーが備えてあるため、このホルダーを用いる。また、Pt/Co/Taは構成層の厚さや繰り返し層数を変えることでスキルミオンサイズおよび密度の調整が容易であるため、様々な試料を作製して、本研究において適切な条件を見出す予定である。ただし、ローレンツ電子顕微鏡観察における電流印加は初めての取り組みであり、電流によって発生する磁場が、電子顕微鏡の電子線および微細加工した試料に影響を与える可能性がある。そのため、電磁界シミュレーションによって磁場分布を求め、試料形状・サイズを検討することも念頭に置いてい る。 また、2022年度の研究過程において、無磁場でスキルミオンが形成される条件を見出しており、2023年度に計画していたホール粘性効果の実験において、解釈が難しくなる磁場の影響を取り除いて実験できる状況になった。そのため、無磁場でスキルミオンが形成される試料を中心として実験を行う予定である。
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