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2022 年度 実績報告書

極性金属における機能創成

研究課題

研究課題/領域番号 21H01030
研究機関大阪大学

研究代表者

高橋 英史  大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (50748473)

研究分担者 中埜 彰俊  名古屋大学, 理学研究科, 助教 (50842613)
秋葉 和人  岡山大学, 自然科学学域, 助教 (60824026)
研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード極性金属 / 半金属 / 超伝導 / ピエゾ効果 / 熱電効果
研究実績の概要

固体物質では結晶構造の空間反転対称性の破れに起因し分極(極性)を持つ物質がある。この分極に起因して、絶縁体材料では強誘電性や圧電性が生じる。また 磁性を持つ材料では、磁性と強誘電性が相関したマルチフェロイック材料がこれまで盛んに研究されてきた。一方で、金属における極性構造の影響についての研究は少なく、特に、極性構造に由来した分極が生み出す機能性はこれまであまり報告されていない。しかしながら、静的な分極の影響は無くても、動的な分極の影響を伝導電子が受ける可能性ある。このような観点のもと本研究では極性金属の合成と新奇現象の開拓を試みた。その中で、極性構造-非極性構造の構造不安定性を持つ、3元系化合物の合成に成功した。さらにこの材料において、2K付近で超伝導転移を示すことを明らかにした。そして、この超伝導の性質を調べるため、0.3Kまでの極低温での磁場依存性や、表面を削ることによる表面依存性や厚み依存性の測定を行った。その結果、超伝導はバルクではなく表面で生じていることが示唆された。また、極性構造に由来した、ラッシュバ型のスピン分裂が予想され、それに起因した異方的な臨界磁場が観測された。さらに、バンド計算からは、ディラック点やワイル点を持つトポロジカルなバンド構造が示唆されており、このトポロジカルなバンド構造に由来した表面超伝導の可能性がある。その他にも。極性金属MoTe2、トポロジカル半金属VTe2、トリビアルな半金属TiTe2における動的ピエゾ効果の観測を試みた。その結果、MoTe2及びVTe2では有限な逆ピエゾ効果を観測し、金属においても誘電性が現れることを明らかにしている。この結果は、トポロジカルなバンド構造を持つ場合に金属での誘電応答が観測されることを示唆している。一方でその定量性やバンド構造と金属での誘電応答の相関については明らかになっておらずその解明が今後の課題である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、極性構造を有する金属材料の合成とその新機能の創成を目指し研究を行っている。そして、これまでに極性-非極性の構造不安定性を持つ新材料(3元系化合物)の単結晶合成に成功した。さらにこの物質の第一原理計算により、バンド反転を持つトポロジカルなバンド半金属であることが示唆された。また電気抵抗や磁化の測定から超伝導転移を示すことを明らかにした。そのほかにも遷移金属カルコゲナイド化合物においてトポロジカルなバンド構造を持つ場合に動的ピエゾ効果の観測に初めて成功している。

今後の研究の推進方策

本研究では、極性-非極性の構造不安定性を持つ新規材料の単結晶合成に成功し、低温2Kで超伝導転移を示すことを明らかにした。一方で、そのこの超伝導がバルクの超伝導ではなく表面超伝導であることが示唆された。そこで、この超伝導が実際に表面で生じているかどうかの直接観測を行うため、操作がたスクイッド等を用いた表面敏感なプローブを用いた物性測定を試みる。そのほかにも、トポロジカル材料における動的ピエゾ効果の観測に成功しており、定量性を含めたより詳細な研究を行うとともに、新しいトポロジカル材料での巨大圧電応答の探索を行う。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Superconductivity in a Magnetic Rashba Semimetal EuAuBi2023

    • 著者名/発表者名
      Hidefumi Takahashi, Kazuto Akiba, Masayuki Takahashi, Alex H. Mayo, Masayuki Ochi, Tatsuo C. Kobayashi, Shintaro Ishiwata
    • 雑誌名

      Journal of the physical society of japan

      巻: 92 ページ: 013701 1-5

    • DOI

      10.7566/JPSJ.92.013701

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Spin-charge coupling and decoupling in perovskite-type iron oxides (Sr1-xBax)2/3La1/3FeO32022

    • 著者名/発表者名
      M. Onose, H. Takahashi, T. Saito, T. Kamiyama, R. Takahashi, H. Wadati, S. Kitao, M. Seto, H. Sagayama, Y. Yamasaki, T. Sato, F. Kagawa, and S. Ishiwata
    • 雑誌名

      Physical Review Materials

      巻: 6 ページ: 094401 1-7

    • DOI

      10.1103/PhysRevMaterials.6.094401

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Possible helimagnetic order in Co4+-containing perovskites Sr1-xCaxCoO32022

    • 著者名/発表者名
      Hidefumi Takahashi, Masaho Onose, Yasuhito Kobayashi, Takahiro Osaka, Soushi Maeda, Atsushi Miyake, Masashi Tokunaga, Hajime Sagayama, Yuichi Yamasaki, Shintaro Ishiwata
    • 雑誌名

      APL Materials

      巻: 10 ページ: 111116 1-7

    • DOI

      10.1063/5.0101473

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Enhancement of the Magnetoresistance in the Mobility-Engineered Compensated Metal Pt5P22022

    • 著者名/発表者名
      Alex H. Mayo, Hidefumi Takahashi, Shintaro Ishiwata, Karolina Gornicka, Michał J. Winiarski, Jan Jaroszynski, Robert J. Cava, Weiwei Xie, Tomasz Klimczuk
    • 雑誌名

      Advanced Electronic Materials

      巻: 9 ページ: 2201120 1-7

    • DOI

      10.1002/aelm.202201120

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 時間分解X線回折測定によるVTe2における超高速格子変調ダイナミクスの観測2023

    • 著者名/発表者名
      鈴木剛, 久保田雄也, 三石夏樹, 赤塚俊輔, 古賀淳平, 坂野昌人, 増渕覚, 田中良和, 大隅寛幸, 玉作賢治, 矢橋牧名, 高橋英史, 石渡晋太郎, 町田友樹, 松田巌, 石坂香子, 岡﨑浩三
    • 学会等名
      2023年日本物理学会春季大会
  • [学会発表] 極性構造を有する新奇超伝導体EuAuBi/SrAuBiのNMR/NQR2023

    • 著者名/発表者名
      大井喬, 小内貴祥, 八島光晴, 椋田秀和, 髙橋優之, 高橋英史, 石渡晋太郎
    • 学会等名
      2023年日本物理学会春季大会
  • [学会発表] V族遷移金属テルライドMTe2 (M = V, Nb, Ta)の電子構造と一次元鎖構造不安定性2022

    • 著者名/発表者名
      三石夏樹, 杉田悠介, 上谷学, 秋葉智起, 坂野昌人, 堀場弘司, 組頭広志, 酒井英明, 高橋英史, 石渡晋太郎, 求幸年, 石坂香子
    • 学会等名
      2022年日本物理学会 秋季大会
  • [学会発表] 極性半金属EuAuBiにおける磁性と超伝導特性2022

    • 著者名/発表者名
      高橋英史, 高橋優之, メイヨーアレックス浩 秋葉和人, 小林達生, 越智正之, 石渡 晋太郎
    • 学会等名
      2022年日本物理学会 秋季大会
  • [学会発表] 超高速時間分解電子回折を用いたTaTe2の光誘起相転移の研究Ⅱ2022

    • 著者名/発表者名
      古賀淳平, 千足勇介, 中村飛鳥, 秋葉智起, 高橋英史, 下志万貴博, 石渡晋太郎, 石坂香子
    • 学会等名
      2022年日本物理学会 秋季大会

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公開日: 2023-12-25  

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