研究課題/領域番号 |
21H01036
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小野瀬 佳文 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80436526)
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研究分担者 |
増田 英俊 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20849278)
新居 陽一 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (80708488)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 角運動量 |
研究実績の概要 |
本年度は、まずスピン角運動量が120度磁気構造を示す遍歴磁性体PdCrO2において非相反伝導の観測を行った。集束イオンビーム加工によって電流密度を増強し、非線形応答である非相反伝導の観測に成功した。詳細な磁場角度依存性の測定を行い、対称性の観点から実験結果を基に磁気構造に関する考察し、中性子散乱実験から同定された可能な磁気構造の中から最も実現している可能性が高いものを同定した。また、電気四重極子の長距離秩序を示すフラストレート系のTb2Ti2O7において磁気モーメント(スピンおよび軌道角運動量)と電気四重極子の結合から生じる巨大な磁気弾性応答(音速や歪の磁場変化)を明らかにした。 まず、四重極秩序に伴う音速の異常を観測し、より高温における磁気弾性応答についても詳細な磁場角度依存性を基にした解析を行い、転移温度よりも十分高い10K程度まで四重極子間の相関が存在することを明らかにした。さらには、圧電基板上にすだれ状電極のペアと強磁性Niを作製して表面弾性波と強磁性が結合したデバイスを作製し、表面弾性波の角運動量を用いて強磁性体の磁化を制御することに成功し、キラル磁性体MnSiのフォノンスペクトルをX線非弾性散乱によって測定することにより空間反転対称性の破れによるフォノン角運動量に関する分裂を明らかにした。以上の論文発表された成果に加えて、角運動量変換の新現象であるキラル磁性体における磁気共鳴誘起の起電力や空間反転対称性が破れた磁性体における熱流誘起の磁化制御の観測を目指した研究を進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PdCrO2の非相反伝導、Tb2Ti2O7の巨大磁気弾性応答、表面弾性波による磁化制御、X線非弾性散乱によるMnSiのフォノンスペクトル、の結果を論文発表できており、熱流磁化制御の実験やキラル磁性体における磁気共鳴誘起起電力観測を目指した実験にも取りかかれている。
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今後の研究の推進方策 |
キラル磁性体における磁気共鳴誘起の起電力の実験に関しては、スピン軌道相互作用の大きさを増強するため、スピン軌道相互作用が大きいキラル半導体Teとパーマロイの二層構造を作製し、そこでの実験を試みる予定である。一方で、熱流誘起磁化に関しては大きな磁気弾性結合を有するTbモーメントを含む磁性強誘電体Tb2(MoO4)3において実験を行う予定である。
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